ロンドン五輪代表、最大の挑戦BACK NUMBER
やっと消えた「クウェートの悪夢」。
U-22代表がバーレーンに勝った意義。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byTakuya Sugiyama
posted2011/11/24 12:10
五輪予選初招集にしてバーレーン戦で先制点をあげたFWの大津祐樹(ボルシアMG)は、試合後に「結果を出すことにこだわってプレーをしていた。とてもいい形で貢献できたと思います」と自らその手応えを語った
攻撃のバリエーションの少なさは、結局、改善されず。
清武、原口という2枚看板が不在の中、どう攻撃を組み立てていくのか。難題を課せられたバーレーン戦だったが、やはり攻撃のバリエーションの少なさは否めなかった。
マレーシア戦では、清武が動くことで人とボールに動きが生まれ、全体の運動量も増え、多くのチャンスを作ることができていた。清武の動きが中盤の繋ぎのセクションとなって、多くのパスコースやスペースを作り、攻撃を活性化していたのだ。
だがバーレーン戦では、山田直輝ら2列目にボールが入っても展開が遅く、ボールを失ったり、ミスしたり、リズムを作れなかった。またバーレーンは、中央に絞った守備をしていたので、サイドがガラ空きになることが多かったが、そこもうまく利用できなかった。時折サイドに入れた時も選手同士の距離や連係が噛み合わず、センタリングやシュートで攻め切ることができていなかった。多くのチャンスを作ってゴールを挙げるというこのチームのスタイルを、十分発揮することができなかったのである。
大津が攻守ともに活躍したのは、勝ち点3と同様の大収穫!
だが、収穫もあった。
マレーシア戦の先発メンバー(清武、原口、山村、酒井高徳)から今回は4人(大津、山田、比嘉祐介、山本)が変わったが、極端にチーム力を落とすことはなく、戦力の上積みは出来たようだ。
特に大津は攻守にわたり質の高さを見せてくれた。
「サイドでの仕掛けとタメを作ってくれることを期待している」と関塚監督は試合前に語っていたが、ドイツで体重が2キロ増えたせいか、身体が大きくなり、当たりも強く、キープ力も身につけていた。さらに守備でもチームに貢献し、きっちり左サイドのレギュラー争いに食い込んできた。
こうした刺激がチーム力を底上げしていくためには絶対に必要になるのだ。大津の存在は、勝ち点3を獲得したのと同等に大きな収穫だといえる。
また、2試合連続で失点ゼロに抑えたのも大きい。
クウェート戦のように、圧力を掛けられると怯んで打たれっ放しになるのが、このチームの弱さだった。だが、マレーシア戦から悪い時間帯を耐えて、しっかり守り切れるようになった。
しかも、今回はアウェーをより意識したせいか、ひとつひとつのプレーの意図をより明確にすることもできていた。例えば、大きくクリアする、外へ蹴って流れを切るというようなプレーだ。何気ないことだが、無駄に流すようなプレーをする時間帯がなくなったのは大きな成長だといえる。これも「クウェート戦の教訓です」と扇原は言ったが、悪夢となったあの試合で浮き彫りになった課題を少しずつにせよ克服していっているのだ、ということが良く分かった。