野球善哉BACK NUMBER
日本Sの流れを変えた、あの一瞬。
ソフトバンクが中日に競り勝った理由。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byHideki Sugiyama
posted2011/11/21 12:15
両チームが球場を去る間際、秋山監督自らが落合監督に歩み寄っていった。お互いの健闘をたたえ合い、最後は握手をし、抱き合って別れた
日本Sのターニングポイントは、第4戦の森福の活躍から。
しかし、セ・リーグの各球団とソフトバンクは一味も二味も違っていた。
チーム打率が12球団1位の.267。走塁を含めた得点力の高い攻撃力でパ・リーグを制している点からも攻撃型のチームと思われたが、大勝ではない勝ち方もできる隙のないチームでもあった。
なかでも、ターニングポイントになったのは第4戦である。
ソフトバンクは1回表に2点を先制しながら、それ以降の好機を潰してしまう。4回以降、中日の先発・川井雄太、山井大介の前に4イニングをパーフェクトに抑えられる。その間に1点差。劣勢から粘り、リズムをつかんだ中日が流れを優勢に持っていく。ソフトバンクは、まさに中日が得意とする展開に持ち込まれたのである。
そして、6回裏には無死満塁のピンチを迎える。おそらく、同点にされただけでも、流れは中日に傾いていた試合だった。
ここで左腕・森福允彦が大仕事を果たす。この窮地を無失点で抑える快投を見せたのだ。
中日が得意とする展開を食いとめた、という大きな意味のある森福の快投だった。落合監督は意に介していないといっても、シリーズにとっては大きな分かれ目となる瞬間だったように思う。
6戦を終えた時点で、両チームには圧倒的な“駒”の数の差が。
もちろん、ソフトバンクが第3戦を攝津正の好投で取っていたから、第4戦があったのは事実だが、4戦目で中日らしい展開を跳ね返し、第5戦目は中盤までは苦しみながらも、5-0と完勝した時点で両者の雌雄は決していたように思う。前日に2イニングを投げ、4連投だったファルケンボーグをこの試合のベンチからは外していたことも大きかった。
第6戦は中日の先発・吉見一起が好投して2-1で勝利。僅差の勝利で最終戦まで持ち込んだ戦いは見事だった。
しかし、6戦を終えて、ソフトバンクは杉内を残していること、6戦目でファルケンボーグと攝津を休ませていることなど、使える駒の多さではかなり上回っていた。
中日にとってはここが限界だったろう。
第7戦は先発の杉内が7回無失点の好投。打線も、中日の先発山井を上手く攻めて、1点を先制。4回裏に山崎勝己の適時打で加点し、7回裏には今年の強いソフトバンクを象徴した内川の適時打で3点目を奪った。8回からはファルケンボーグが登板し、1回をぴしゃりと抑えた。2イニング目の9回表に打球を受け降板するアクシデントがあったが、この窮地を3、4戦の勝利の立役者、森福と攝津が凌ぎ、栄冠を勝ち取った。