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群雄割拠の明治神宮大会・大学の部。
明治と亜細亜のエース対決が実現?
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2011/11/19 08:01
明大の野村祐輔は4年間でリーグ通算358奪三振、30勝を達成。ドラフト1位で入団する広島では、即戦力右腕として期待がかかる
秋季リーグ中にフォームを改造、ストレートに安定感が。
あまり大きく扱われないが、秋季リーグの野村は投球フォームを変えている。それまでの野村は直線的なバックスイングに特徴があった。言葉を変えれば、始動の足上げからトップに行くまでの動きが急だった。
それがこの秋は、右脇腹にこすりつけるように柔らかくヒジから上げるバックスイングに変わった。バックスイングに入った途端ヒジをまとめていた春までとくらべ、ゆったりとトップを作る動きになり、その分投げに行く直前のヒジの位置が高くなり、それによってヒジを起点とした腕の振りが可能になり、ストレートが低めに集まるようになった。
秋の成績は9試合に登板して6勝1敗、防御率は2.91とよくない。スピードも140キロ台中盤が多く、春までのように148キロとか149キロが出ていない。これは神宮球場のスピードガンが以前より数値が低く出るように設定されている(正常値に戻った)ためだと思われるが、フォームを変えて起こるさまざまな困難を克服してチームを優勝に導いた点に注目したい。一言で言えば、欲が出てきた。
楽天6位指名の島内など、好選手揃いの明大に期待。
この野村以外にも明大には好選手が多い。川辺健司は強肩自慢のディフェンス型捕手と言われてきたが、秋季リーグでは首位打者・岡崎啓介の打率.424に2厘差足りない打撃成績2位と健闘。捕手らしく配球を読んで打ち、内角球を投げにくくさせるためベース寄りいっぱいに構えるなど、打席内での工夫にも捕手らしさがうかがえて好感が持てる。
3番島内宏明(左翼手・楽天6位)は4年になってレギュラーを獲得した遅咲きだが、春のリーグ戦が打率.385(リーグ3位)、秋が.349(同6位)と上位に君臨している。好打とともに、打者走者としての一塁到達がコンスタントに4秒前後を記録する俊足も魅力。ドラフト指名組らしい華やかな乱れ打ちを最後の大舞台で演じ、地味めだった印象に別れを告げたい。
成長を遂げたエース東浜が東都の覇者・亜大を引っ張る。
明大に対抗するのは東都の覇者、亜細亜大(以下亜大)だ。'09年に選抜優勝投手・東浜巨が鳴り物入りで入学して以来、常に優勝争いを期待されながら'09年=春3位、秋2位、'10年=春2位、秋5位、'11年=春3位と、殻を破れないできた。
亜大の迷いは東浜の迷いと言ってもいい。勝ちを優先するあまり変化球主体のピッチングになり、とくに1、2年時はツーシームの多投が目立ち、プロスカウトの評価も下げていた。
変貌が見えたのは今年春の終盤である。東都大学リーグが日程消化のため神宮球場を離れ、府中市民球場でリーグ戦を開催した5月31日の中央大戦、東浜は抜群のピッチングを見せた。ストレートは学生偵察隊のスピードガンで最速148キロを記録し(正味の数値)、これにスライダー、ツーシーム、チェンジアップ、カーブの変化球を交えるピッチングスタイルは従来と変わらないが、ストレートと変化球の直曲比率が半々くらいに変わっていた。