プロ野球亭日乗BACK NUMBER
人材発掘か、ベテランの再生か――。
育成選手制度を巡る“同床異夢”。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2011/11/02 10:30
今季もファインプレーを連発し、大いにロッテファンを沸かせた岡田幸文選手。その超美技を楽しみに訪れるファンも多いという
また、育成選手の新しい地平が切り開かれた。
ロッテの岡田幸文外野手とオリックスのアーロム・バルディリス内野手が今季、育成制度出身の選手として初めて規定打席に到達したのだ。
育成枠から支配下登録され、1軍で活躍した選手は、これまでもかなり出てきている。ただ意外だが、これまで規定打席に到達した選手は一人もいなかった。もっとも近かったのが巨人の松本哲也外野手で、2009年にレギュラーを獲得して129試合に出場したが、規定打席には22打席足りない424打席で終わっていた。
投手でも巨人の山口鉄也投手が中継ぎとして4年連続60試合登板しているが、これまで規定投球回数に到達した投手は一人もいない。それだけに、今回の岡田とバルディリスの(特にやはり岡田の)数字が、育成出身選手にとっては、また一つ、新しい階段を登ったものといえるわけだ。
プロになれたのは育成制度のおかげだと岡田は言う。
「育成制度がなかったら自分はプロの世界に足を踏み入れられたかどうかも分からない」
岡田はしみじみと言っていた。
ご存知の読者も多いと思うが、岡田は栃木の作新学院から日大に進み、同期入学には巨人の長野久義外野手がいた。
しかし大学1年生のときに左ひじを痛めて手術を余儀なくされ、わずか数カ月で退学。その後は全足利クラブというクラブチームでプレーし、'08年の育成ドラフトでロッテから6位指名されてプロ入りした。
「おそらく育成枠がなければ、いまの自分はいない。こうしてプレーできるのは育成制度のおかげだし、育成制度は自分のような選手にとって、絶対に必要な制度だと思います」
実感だと思う。
そしてこうした埋もれた選手を発掘して、育て上げる制度としての育成制度は、当初の設立の趣旨でもあるわけだ。
ただ、一方で改めてこの制度の意味を考えさせられるニュースがあったのも事実だ。
一つはソフトバンクが、広島の社会人チーム、伯和ビクトリーズの星野雄大捕手を育成ドラフトの指名リストに入れていたが、指名そのものができないとされたニュースだ。