プロ野球亭日乗BACK NUMBER
人材発掘か、ベテランの再生か――。
育成選手制度を巡る“同床異夢”。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2011/11/02 10:30
今季もファインプレーを連発し、大いにロッテファンを沸かせた岡田幸文選手。その超美技を楽しみに訪れるファンも多いという
支配下選手70人枠が「育成」の理念をねじ曲げる一因に。
こうした問題の根底にあるのは、やはり支配下選手70人枠にあるように思う。この制限がある限り、はみ出た選手の行先は育成枠しかなくなる。そうして「育成」とはかけ離れた選手契約が生まれるわけである。
支配下枠の撤廃はこれまで何度も論議の的となってきた。ただ、その都度、流れてきた理由は「公平の原理に反する」ということだった。資金力が豊富なチームは選手をどんどん抱えて、乏しいチームが置いていかれる。
ただ、プロ野球とは1軍が144試合のゲームを消化して、優勝を争うものであるはずだ。だとすると選手を何人抱えようとも、1軍登録できるのは28人であり、ベンチ入りできるのは25人、そしてグラウンドに立てるのは9人しかいない。選手を大勢抱えたら1軍ベンチに30人入れるというのなら話は別だが、勝負の場では公平の原理は保たれているはずなのである。
本来的な意味での育成制度を実現するためには?
本来的な考え方をすれば、選手の保有枠を外して、その代わりに1軍登録が可能な人数――40人から50人が妥当のように思うが、70人なら70人でもいいかもしれない――を決めて、その選手に最低年俸保障するのが適切ではないか。あとは自由に選手を獲得できる制度(もちろん年俸の下限は設定してだが)にした方が、チーム間、チーム内の競争ももっと生まれるし、システムとしてどれだけすっきりするかとも思うのだ。
岡田が語るように、現状では育成制度は選手をすくい上げていくためには、必要な制度かもしれない。ただ、もう一つの側面として、今の育成制度は、歪んだ制度でもあるわけだ。
決して終着駅ではない。
過渡期の制度であることを、球界関係者はもちろん、ファンを含めた我々も、改めて頭に刻み込むべきだろう。