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人材発掘か、ベテランの再生か――。
育成選手制度を巡る“同床異夢”。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2011/11/02 10:30

人材発掘か、ベテランの再生か――。育成選手制度を巡る“同床異夢”。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

今季もファインプレーを連発し、大いにロッテファンを沸かせた岡田幸文選手。その超美技を楽しみに訪れるファンも多いという

企業所属の社会人はNGで、リハビリ目的のプロはOK!?

 理由は、企業所属の選手は「技術向上と社会教育」という育成制度の理念からははずれるので、もし指名するならば支配下選手として指名すべき、という日本野球連盟からの申し入れがあったからだという。

 これは育成制度の目的を、改めて再認識させられるきっかけとなったニュースだった。

 だとすれば、と思わされたのが、もう一つの広島・菊地原毅投手のニュースだった。

 菊地原はプロ19年目、36歳のベテラン左腕だ。今年は中継ぎとして5試合に登板したが、9月13日のヤクルト戦で左アキレス腱を断裂の大けがをした。その結果、球団は10月13日に戦力外通告をした後に、改めて育成枠での契約をするという。

 見方によっては、育成枠だからこそ、星野はプロに入るチャンスをつかめるのかもしれないし、育成制度がなければ菊地原は引退を余儀なくされるかもしれない。しかし、制度の趣旨ということを考えると、日本野球連盟の主張はもっともだし、菊地原のようなケースで育成枠を利用することが、その制度の精神に沿っているかどうか……。そこは、はなはだ疑問の湧くところでもある。

“経費節減”の一環として育成制度を利用する球団も。

 同床異夢――。

 実は育成制度ができた当初から、球団によって制度に対する考え方は微妙に違っているように思う。

 もちろん読んで字のごとく「育成」のために、この制度を活用しているチームもないわけではない。その一方で、支配下登録70人枠の調整として活用したり、極端な言い方をすれば“経費節減”の一環として、この制度を利用しているのでは、と思える球団も少なくない。

 昨年も巨人から戦力外通告を受けたベテランの藤田宗一投手が、ソフトバンクと育成契約を結んだケースがあった。藤田はチャンスを与えられたともとれるが、育成契約で囲い込んで、戦力になるかどうかを判断したのではないかということもできる。結果的にはキャンプ後に藤田は支配下登録されて、1軍登板もした。ただもし、支配下登録されなかったら今年で39歳となったベテラン左腕が、育成枠として1年間、1軍出場の機会はないままに時を過ごすことになったわけだ。こんなベテランを「育成」するというのは、明らかに制度の趣旨とは相いれないことと感じるのは筆者だけだろうか。

【次ページ】 支配下選手70人枠が「育成」の理念をねじ曲げる一因に。

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