野球クロスロードBACK NUMBER
なぜソフトバンクで成功したのか?
CSでも打ちまくる、内川聖一の矜持。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2011/11/04 11:40
CS初戦を勝利で飾ったヒーローは、お立ち台に上って郷里の大分弁で「あとふたつ、勝つけんの~」と絶叫。過去1度もCSを突破したことのないソフトバンクだが、この内川の勢いでジンクスを吹き飛ばしそうだ
ソフトバンクがクライマックスシリーズ(以下CS)ファイナルステージ初戦をものにできたのは、シーズンでの戦い方を徹頭徹尾貫いたからだった。
1番の川崎宗則が3度出塁できたことから、盗塁すべきところではしっかりと走らせ、送らなければならない場面ではクリーンナップにもバントを命じる。采配が100%的中したわけではなかったが、それでもソフトバンクの攻撃には全くブレがなかった。
安定した打線がそれを可能にしていることは間違いない。もっと言ってしまえば、中軸に抜群の得点能力があるからこそ、ベンチも積極的に攻撃を仕掛けることができるのだ。
「『これだけお客さんが入るなかで試合をやりたい』と思っていた」
なかでも欠かせないのが、3番を打つ内川聖一の存在だ。
ファイナルステージ初戦は、彼の得点能力が十分に生かせた試合だった。
初回、2回と先頭打者を出しながら得点できずに迎えた3回だった。1死一、二塁のチャンスで本多雄一がショートゴロに倒れ2死一、三塁。「3回チャンスを潰すとチームの雰囲気が悪くなる。絶対、俺が打ってやる」と集中して臨んだ打席で、内川は西武の先発・帆足和幸の外角低めの変化球を捉え、ライトオーバーの先制三塁打を放った。
先頭打者で迎えた6回には、真ん中低めに甘く入った速球を見逃さずにレフト線へ運び、その後のダメ押しとなる2点を演出した。
「待ち遠しかったですね。日本ハムと西武のファーストステージを見ていて、『これだけお客さんが入るなかで自分も試合をやりたいな』と思っていたんで」
ホームの福岡でCS初勝利を手にした内川は、安堵の笑みを浮かべながらお立ち台で喜びのコメントを口にした。
FAで横浜から移籍した今季、内川は、周囲の「日本を代表する投手が多いパ・リーグで実力を発揮できるのか?」といった懸念の声を一蹴する活躍を見せた。
開幕から安打を量産。5月中旬まで打率4割を超えるなど早くもパ・リーグに順応し、セパ交流戦ではMVPに輝いた。故障のため6月下旬から1カ月ほど戦線を離脱したものの、復帰後には再び3番として快音を響かせシーズン打率3割3分8厘。史上2人目となる両リーグでの首位打者を獲得するとともに、チームの連覇に大きく貢献した。