プロ野球PRESSBACK NUMBER
セは5番打者、パは3番打者。
CSファイナルの鍵を握る男たち。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byHideki Sugiyama
posted2011/11/01 12:00
守りの落合野球の要として活躍する谷繁元信は、その監督をして「4番の代わりはいるが谷繁の代わりはいない」と言わしめるほどのキープレイヤー。12月には41歳になるが、リーグ優勝からの日本一を目指し、以前と変わらぬ全力プレーでポストシーズンにのぞむ
谷繁とはまったく逆のタイプの宮本の強みとは?
宮本は、谷繁とは逆のタイプだ。
たとえ自身の成績に結びつかなくとも、チームが勝利するための打撃に意識を集中させる。
例えば、無死一、三塁で打席が巡ってくるとする。それが勝敗を左右する場面であれば、宮本は相手の守備陣形を確認し、セカンドとショートの位置が深ければゲッツーを覚悟でそこへゴロを打ち、1点をもぎ取る打撃を徹底するのだ。
宮本は、そのような打撃についてこう話していたことがある。
「打てるのはいいことだけど、チームとしてはやっぱり優勝を目指してやっているわけですから。特に個人の結果にこだわるようなことはないですね」
巨人とのCSファーストステージ初戦で放った勝ち越しの犠牲フライも、彼にとってのチームプレーから生まれた一打だった。
初球の内角低めのシュートを空振り。2球目の外角低めのボールを見逃し、3球目の内角低めの速球を鋭く振り抜いた。右打ちを意識することが多い宮本であれば、外角球を待ってもよかったはず。しかしそれをせず、確実に外野フライを打てる内角低めに狙いを定めていたのだ。
リーグ3位の打率3割2厘もファーストステージ通算10打数1安打も、宮本からすれば取り立てて数字にこだわってはいないのだろう。重要なのは、自身の打撃がどのようにチームの勝利に結びつけられるのか、だけなのだ。
谷繁と宮本。奇しくもふたりは、シーズン終盤から5番を任されるようになった。チームとしても、彼らの打撃がゲームの趨勢に大きく関わることを知っている。
5番打者の「読む力」。
セ・リーグでは、これが勝敗の分かれ目になるかもしれない。
破壊力抜群のパの2チームだが、命運を握るのは3番打者となる。
パ・リーグは、ソフトバンクに西武と、ともに破壊力抜群の打線を持つチーム同士がぶつかる。
だからといって、主砲に勝負の命運を託すのはいささか危険だ。CS(プレーオフ含む)通算84打数16安打、打率1割9分。敗れるたびに戦犯扱いされたソフトバンクの松中信彦は代表的だが、今季でいえば西武の中村剛也なども格好の標的とされるだろう。
そうなると、出塁、安打ともに安定した数字を残せる3番が、主砲並みの役割を担わなければならない。
今季の首位打者であるソフトバンクの内川聖一は、それを可能とする打者だ。