プロ野球亭日乗BACK NUMBER
ラミレスがラミレスでなくなった日。
ファンに愛された選手が歩むべき道。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2011/10/18 10:30
37歳になったラミレスだが、今季は来日以来11年連続で20本塁打以上という外国人新記録を樹立。巨人との契約が切れる今オフの去就が注目される
打てず、守れずのラミレスへの監督の評価は手厳しい。
確かに打率の2割7分1厘は、これでも巨人では長野久義外野手に次ぐ数字だ。他チームの主力を見まわしてみても、2割3分台に低迷する中日の和田一浩外野手や森野将彦内野手、2割5分台の阪神・新井貴浩内野手らに比べればまだましな部類ともいえよう。
数字面だけをみれば、統一球の導入で投高打低現象となっている球界全体の流れにラミレスものみ込まれたということだが、その中でこの選手の不振だけが大きくクローズアップされるのには、それなりの背景がある。
「ラミレスは打ってナンボの選手。あの守備力を引き算するとなると、これまでのように突出した打撃力を示せないと使いづらい。だから不振がよりクローズアップされるということになるんでしょう」(前出球団関係者)
象徴的な場面は9月19日の中日戦だった。
1回に2死三塁で谷繁元信捕手のライナー性の当たりに1度下がって、慌てて前進するプレーで適時打とすると、その後も緩慢なプレーを連発。結局、この試合を落として巨人は一気に中日に突き放されることになる。
「本人は精一杯のプレーをしているつもりだろうが、逆にあれで精一杯だとすれば、彼の守備によるデメリットも考えざるを得ない」
原監督の口調が自然と厳しくなるのは当たり前だった。
ファンを大切にしてきたラミレスが記念撮影を拒んだ日。
「ちょっとごめんなさい……」
険しい表情でラミレスがファンの写真撮影を拒んだのは、それから数日後のことだった。
9月29日の横浜スタジアム。試合前の打撃練習を終えたときだった。ベンチに戻ったラミレスに、関係者の知人と思しきファンが記念撮影を依頼した。しかしいつもなら快く応じる男が、険しい表情でそれを断り、一目散にロッカーへと引き上げてしまった。
実はこの試合前まで3試合連続でスタメン落ちしていたため、原監督に先発出場を直訴。しかしその願いは退けられた直後だったのだ。
後にも先にも、ラミレスがファンサービスを断る場面を見たのは、このときだけだったが、それはラミレスがラミレスでなくなったように思えた光景でもあった。