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ラミレスがラミレスでなくなった日。
ファンに愛された選手が歩むべき道。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byHideki Sugiyama

posted2011/10/18 10:30

ラミレスがラミレスでなくなった日。ファンに愛された選手が歩むべき道。<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

37歳になったラミレスだが、今季は来日以来11年連続で20本塁打以上という外国人新記録を樹立。巨人との契約が切れる今オフの去就が注目される

 巨人のアレックス・ラミレス外野手はいつも労を厭わずファンサービスに取り組んでいて、その姿勢には本当に頭が下がる思いがしている。

 心に残っている光景がある。

 ヤクルトから巨人に移籍してきた2008年の宮崎キャンプ。その初日の出来事だった。

 朝のアップが始まり、選手が続々とグラウンドに出てくる。スタンドのファンは思い思いの名前を呼んで声援を送っていた。

 しかし、選手の中でその声に手を上げたり、声援の方を振り返って応える選手はほとんどいなかった。こういうケースで選手が反応すると、すかさずあちこちからまた声援が飛ぶ。それにいちいち反応していたらキリがない。だから選手たちも――これは巨人に限らないことだが――あまり積極的に応じることはないのが通例だったわけだ。

積極的なファンサービスで巨人の雰囲気を一変させた人気者。

 しかし、そんな中でラミレスがグラウンドに出てくると、一瞬でムードが変わった。

「ラミちゃ~ん!」

 スタンドから飛んだ声に、すかさずラミレスが手を上げて応えた。

 そして大事なことは、それがただ形式的に応えただけのものではないということだった。

 次々に巻き起こる声援の一つ一つに、ラミレスは反応した。練習の合間にも隙があれば手を上げたり、ウインクをしたりとグラウンドから積極的にスタンドと交流してみせたのだ。

 静まり返っていたスタンドに笑いが起こり、キャンプ全体が一気に活気を帯びたムードに変わっていった。

「巨人はこれだけでも、ラミレスを獲った価値はあった」

 その瞬間に思ったことを鮮明に記憶している。それから4シーズン。ラミレスのファンサービスに取り組む姿は、変わることがない。

強打者から平凡な打者へ──数字が示すラミレスの凋落。

 だが、そんなラミレスも、来季は巨人でプレーできるかどうかは微妙な立場となっているようだ。

 打者の能力の大きな指標となるOPS(出塁率+長打率)は昨年の9割5分1厘から7割4分5厘と落ちている(数字はすべて10月13日現在)。これはいたって平凡な打者並の数字といえるだろう。

 セイバーメトリクスではその選手9人でチームを構成したときの期待得点値を表すRC27(Runs Created per 27 outs)という項目があるが、その数字も昨年の7.12から4.74と急落している。

「ただ、そういう数字は他の選手も軒並み落ちている。それを考えると一概にラミレスの力が衰えたから、数字が悪化したとは言い切れない部分もある」

 そう指摘するのは、ある巨人関係者だった。

【次ページ】 打てず、守れずのラミレスへの監督の評価は手厳しい。

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