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落合采配の「ふたつの顔」。
~絶対的信頼と絶対的不信~ 

text by

鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byKYODO

posted2009/10/21 11:30

落合采配の「ふたつの顔」。~絶対的信頼と絶対的不信~<Number Web> photograph by KYODO

ヤクルトとの最終戦、落合監督がデントナの左翼ポール際への本塁打判定に抗議。遅延行為とみなされ退場となった

落合采配を際立たせる、選手に対する“見切り”。

 走者が二塁で併殺の可能性が低いのだから、普通なら英智には右打ちのサインを出して、あわよくば安打が出る可能性にかける。たとえ凡退しても、チェンで送れば走者を三塁に進めることはできる。

 だが、落合監督はそうはしなかった。

 そこには独特の選手に対する見切りがある。

 この場面で落合監督が絶対的な信頼を置いたのは2死から打席に立つ井端弘和内野手だった。そして絶対的な不信で見切ったのが打席の英智の打撃能力だった。

「オマエは打席では何もしないでいい。しっかり守っとけ!」

 この試合で落合監督が8番に英智を起用したのは、その守備力に対する信だった。

絶対の信頼を置く、1番・井端弘和の打力。

 シーズンを通して防御率1.54というエースを立てた短期決戦の初戦。攻撃を無視しても守りを固めることを優先したわけだ。だから英智のバットにはみじんも期待をかけない。その代わりに2つのアウトを犠牲にしても信じたのが1番に座る井端だった。

 シーズン中には8番に捕手の谷繁元信が座るケースが多い。その場合にも無死で走者が出ると谷繁に送りバントをさせて、9番の投手には「三振して帰って来い」と打席に立たせることが多くあった。たとえ2死になっても井端のバットにかける。それぐらい指揮官は井端の打力を信じ、その期待に井端も5回のチャンスでは適時打で応えた。

「信」という言葉を巡る、落合監督と原監督の違い。

 ヤクルトとの激闘を制してCS第2ステージでぶつかるのは宿敵の巨人だ。

 信と不信を使い分けて選手を動かす落合監督。そして「選手を信用はするが信頼はしない」と同じように二つの信を使い分ける巨人・原監督。二人の監督がどんなタクトを振るって選手を動かすのか。

 巨人と中日の激突は、このベンチの戦いからも目が離せない。

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