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日本ハムは、“宇宙一”のファンに
「親孝行」ができるのか?
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byNaoya Sanuki
posted2009/10/21 12:00
近頃のノムさんの言葉には、素直に首肯しがたいところがある。どこかにメディアを操作しようとしているような不純さが見え隠れしてしまうのだ。
でも1つだけ、信じられる言葉があった。
「仙台のファンに恩返しをしたい」
そのようなことをどの時点から強調しだしたのかは不明だが、その気持ちはわかる。
仙台のクリネックススタジアムへ実際に足を運べばわかるが、仙台のファンは本当に暖かい。阪神ファンのようにエキセントリックな面もなく、千葉ロッテファンのように好戦的なところもない。どんなことがあっても味方です、といった親のような慈愛を感じるのだ。それによって選手たちが発憤するのは、言ってみれば、親孝行のような感覚に近いのかもしれない。
ファンの愛情の深さで1、2を争う日本ハムと楽天。
同様に素晴らしいのは、北海道日本ハムのファンだ。梨田監督も、リーグ1位を決めたとき、こんな表現でファンを讃えた。
「日本ハムのファンは宇宙一です!」
この言葉も、実際に札幌ドームで戦っていたらそう思うだろうな、と納得できる。
今季のパ・リーグは、そんな愛情の深さでいったら双璧だろうと思われるファンの後押しを受けた2チームが残った。
楽天の方が勢いを感じるものの、CS第2ステージは札幌ドームだ。
札幌では、さすがの楽天もそう易々と勝たせてもらえないのではないだろうか。
クリネックススタジアムもそうだが、札幌ドームを訪れれば、ファンがチームを成長させる、強くさせるというのはこういうことなんだなということを体感できる。
9回裏、たとえ5点差、6点差ついていたとしても、日本ハムの選手たちはあきらめない。というよりは、ファンのためにも、せめて1本ぐらいはヒットを打とうとしているのが伝わってくる。そして実際に1本ヒットが出ただけでファンは大喜びするのだ。思いがつながり、得点になる。そんなシーンを何度となく見た。
だから、たかが1本ヒットが出ただけでも、何かが起こるのでは、という雰囲気になってしまうのだ。
それともうひとつ、札幌ドームで驚かされるのはファンのユニフォーム着用率の高さだ。通常だと、外野スタンドに陣取っている一部の熱狂的なファンだけが着ているものだが、外野も内野も、ほとんどのファンが日本ハムのユニフォームを羽織っているのだ。メジャーリーグの球場のような光景だ。
“親孝行シリーズ”はやはりホームの日本ハムが有利?
札幌ドームのファンは、本当にこの場所、この一瞬を楽しもうとしている。たとえ負けても、いいゲームを見せてくれてありがとう、というような。ひと昔前だと、プロ野球ファンといえば、負けるとイスを蹴飛ばすような荒っぽさがあったものだが、そんな感じは微塵もない。
さて、いよいよパ・リーグのCS第2ステージが始まる。場所が札幌ドームということを考えると、やはり僅差になったら、日本ハムファンの力がものを言うような気がしてならない。
「親孝行シリーズ」は、やはり親に見守られているチームの方に分がある。