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東アジアサッカー選手権 VS.韓国 

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木ノ原句望

木ノ原句望Kumi Kinohara

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photograph byKenjiro Sugai

posted2008/02/26 00:00

東アジアサッカー選手権 VS.韓国<Number Web> photograph by Kenjiro Sugai

 肉体的な疲労は精神的な疲労と連動していて、簡単に切り離して考えることはできない。実際に疲労困憊していると考えがなかなかまとまらない、身体が思うように動かないということは、日常生活でも、ままある。だが日本が1−1で引き分けた、2月23日の東アジア選手権韓国戦での日本のプレーは、そういう疲労の問題だったのだろうか。

 それまで2試合を中2日で戦ってきて迎えた3戦目で日本の同大会最終戦。総得点でリードする韓国は引分けでも大会優勝を手にすることができるが、日本は勝たなければ優勝を逃すという状況だった。

 だが、日本選手のプレーは立ち上がりからどこか鈍く映った。そして前半15分、カウンターから攻撃を立て直した韓国に先制を許した。「またか」と思わされる、日本のスロースタートと早々の失点だった。

 約1週間で3試合。しかも、3日前には、危険を承知の上でファウルを重ねる中国とフィジカルな戦いを繰り広げていた。日本選手の動きの鈍さや重さ、運動量の少なさは、そういう試合に1−0で競り勝った後の、疲れと気の緩みか。あるいは、主力を欠く韓国の布陣への油断だったのか。

 ピリッとしないまま試合を始める日本チームの悪い傾向は、これまでにもあった。しかもよいときと悪いときの波が大きすぎる。この大会でも、17日の北朝鮮戦(1−1)で同じようにまずい入り方をして、立ち上がり6分で失点するという苦い経験をしていた。それを修正しての中国戦での善戦と思われたのだが、韓国戦を見る限り、わずか1試合で元に戻ったところをみると、修正はホンモノではなかったということになる。

 選手にもやりにくさはあったかもしれない。岡田武史監督はケガ人が多いこともあって、各試合で先発メンバーを入れ替えた。この試合でも、所属チームで守備的役割を務めるMF橋本英郎を中盤の右サイドの攻撃的な位置で使い、本来は右サイドバックの加地亮を、北朝鮮戦と中国戦の後半に引き続いて左サイドバックで起用した。

 だが、橋本と周囲の選手のかみ合わせがいまひとつで、サイドで仕掛ける場面ではせっかくスピードアップしたところでチーム全体のプレー速度が落ちて怖さは半減していた。加地は、北朝鮮戦よりは少しこのポジションに慣れたようにも見えたが、依然として本来の鋭さを欠いていた。彼らのこのポジションでの起用が効果的だったのか、疑問が残った。

 さらに、前の試合に引き続いて1トップでプレーしたFW田代有三も、韓国のマークに悩まされ続けて前線でボールを落ち着かせることができなかった。そのため、日本は仕掛けようとしたところでボールを失い、遠藤保仁、中村憲剛、山瀬功治ら、攻撃を組み立てる役割の中盤の選手が慌ててボールの後を追うことを繰り返す、苦しい展開になっていた。ボールを失って、相手にはペナルティボックス周辺まで攻め込まれ、最後はDF中澤祐二の身体を張った堅守に救われるという場面が目立った。

 そういう苦しい状況が好転するかと思われたのが、後半18分に安田理大がMFに投入されてから。安田の相手へ挑むプレーでチーム全体の動きが活発になり、右サイドバック内田篤人の攻め上がりが積極的になった。そうした内田の攻撃から、後半23分の同点ゴールにつながる右CKを得て、遠藤のCKを受けた内田が山瀬にボールを送り、山瀬がそれを冷静に決めた。

 苦境でセットプレーが有効であることがここでも証明された形だが、しかし、そこで傾きかけた流れを自分たちのものにすることはできなかった。最後まで、相手との競り合い部分を立て直せずに、全てに遅れを取ってしまった格好だ。

 試合で肝心なのは、流れの中で相手に迫る1歩、相手と闘う気持ちを出せるかどうか。システムやメンバー構成がどうでも、そこは個々の選手がそれぞれのプレーに出せる基本的な部分だろう。そこで負けてしまっていては、どんな試合にも勝つのは難しい。より厳しい闘いが多いワールドカップ(W杯)予選なら、なおさらのことだ。

 選手起用のテストも新しいシステムのチャレンジもいい。この3試合でポジティブな発見もあったかもしれない。だが、次のW杯予選となる3月26日のアウェーでのバーレーン戦の前に、まずはもう一度、試合への基本的なアプローチを見直した方がよさそうだ。

岡田武史
橋本英郎
田代有三
中村憲剛
山瀬功治
安田理大
内田篤人

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