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南アフリカW杯アジア最終予選 VS.ウズベキスタン 

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木ノ原句望

木ノ原句望Kumi Kinohara

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photograph byNaoya Sanuki

posted2008/10/17 00:00

南アフリカW杯アジア最終予選 VS.ウズベキスタン<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

 「日本の強さは中盤。僕は、ボールをコントロールしてプレーする、日本の中盤が好きだ。」

 1−1の引き分けに終わった、10月15日のワールドカップアジア最終予選・ウズベキスタン戦。試合後の会見で、敵将であるミルジャラル・カシモフ監督が語った台詞には、皮肉がたっぷり込められているような気がした。

 日本戦を前にすでに2戦2敗を喫してA組最下位に位置していたウズベキスタンは、勝ち点3を求めて、埼玉スタジアムでの試合開始から積極的に中盤でプレスをかけ、日本のプレーを潰そうとしてきた。

 想定外の相手のプレッシャーを受けて、日本は後ろでボールを回す機会が増え、攻撃に転じようと出したパスが相手にカットされる場面も少なくなかった。プレスのかけどころやボールカットの仕方を見ると、ウズベキスタンは日本のプレーをよく研究しているようだ。そう思わされる局面が多かった。

 前半27分、ウズベキスタンに奪われた先制点は、その状況を象徴したものと言えるだろう。MF中村俊輔からサイドを上がるDF内田篤人に出されたパスは、相手DFにカットされ、そこから素早く縦につながれた。DF闘莉王がクリアを試みるも上手く拾われて、彼の裏のスペースに走りこんだMFカパーゼへ。カパーゼに右サイド深くまで展開されると、ボールはファーサイドのFWシャツキフに渡り、決められた。

 「日本のセンターバックの2番(中澤佑二)と4番(闘莉王)は強いし、中盤にはシュンスケ・ナカムラに7番(遠藤保仁)、17番(長谷部誠)と、優秀な選手がいる」

 カシモフ監督は試合前日にこうコメントしていた。そして、このたびウズベキスタン代表チームのアドバイザリースタッフに就任した、元日本代表監督ジーコ氏との会話から授かった知識の一部を紹介したのだが、試合後には「彼の情報はひとつひとつが非常に役にたった」とも話している。

 彼には、「日本は中盤でボールを多く回す。だから、カットできるチャンスはある」という思いがあったのではないか。実際に、ウズベキスタンは日本の攻撃の芽を中盤でカットした。自分の思惑通りにことが進むのだから「好き」にならないわけがない。

 岡田武史日本代表監督は、「相手がプレスをかけてきたところで臆病になって、バックパスが増えてしまった」と自分のチームの不出来を嘆き、「これまで、ウズベキスタンが前半からああいう戦いをしてきた試合はなかった」と、相手の出方が日本には想定外だったことを認めた。

 しかし、ウズベキスタンは日本戦で負けて3連敗になれば、この予選で生き残れない状況だった。リスクを冒してでも攻めて勝ち点3を獲りにくることは、十分考えられたはずだ。その可能性をさほど考慮していなかったとすれば、読みが甘かったと言わざるを得ない。指揮官の認識はチームに敏感に伝わる。

 また、相手の出方が予想と異なったときに、臨機応変に戦い方を変えてプレーできる対応力が、日本の選手にはまだ不足しているとも言える。

 同点ゴールを生み出した前半40分の場面では、それまでとは違った、変化のある動きが組み合わさっていた。それは、中村俊輔の大きくディフェンスの裏を付いたクロスであり、そこに猛ダッシュで突っ込んだFW大久保嘉人の動きであり、逆サイドでゴール前に詰めていたFW玉田圭司のポジショニングだった。

 それ以外で効果的だったのは、後半終盤にFWとしてパワープレーでゴールを狙い続けた闘莉王の動きぐらいか。ボランチから前線へ上がるような動きも、チームにはほとんどなかった。となれば、チャンスの数は多くても、本当に効果的なものになっていなかった可能性がある。

 似たようなタイプの選手ばかりが起用された影響もあったかもしれないが、FWとしての闘莉王に得点源を頼ってばかりでは、チームとして限界がある。もっと違ったタイプのFWやMFを起用し、違った発想でプレーできるようにならなければ、オーストラリア、カタール、バーレーンという曲者揃いの組で勝ち残るのは難しい。チームには選手選考にもプレーにも臨機応変さが求められているように思う。

岡田武史
ミルジャラル・カシモフ
中村俊輔
内田篤人
田中マルクス闘莉王
中澤佑二
ジーコ
玉田圭司
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