岡田ジャパン試合レビューBACK NUMBER

キリンチャレンジカップ2008 VS. UAE 

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木ノ原句望

木ノ原句望Kumi Kinohara

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2008/10/14 00:00

キリンチャレンジカップ2008 VS. UAE<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

 数多くのチャンスから放ったシュート本数は相手の4に対して日本は15、ボール支配率も60%を優に超えた。本来なら快勝のはずの試合データだが、ある要素が不足していたために、スタジアムに駆けつけた観客にもテレビで観戦したファンにもフラストレーションの溜まる試合になってしまった。

 その不足要素は決定力。これまでにも再三指摘されてきた、日本が抱える問題点だ。10月9日、ワールドカップ最終予選のウズベキスタン戦を1週間後に控えて行われたアラブ首長国連邦との強化試合でも再びそれは露呈し、結果は1−1の引き分けに終わった。

 岡田監督は、「サッカーなので1失点は仕方ない。もう1点が取れなかったことが一番の問題」と話したが、1失点を仕方ないと言えるのは、あくまでも2点以上決められる力があってのこと。今の日本にそれはない。

 実に頭が痛い問題だと改めて感じるのが、今回代表デビューを果たした岡崎慎司や興梠慎三も、代表戦の経験が少なくない大久保嘉人や玉田圭司も、経験や年齢に関係なく、FW陣が皆、同じように決めきれないという事実だ。

 彼らの、積極的にゴール前に顔を出し、得点に絡もうとする姿勢は大いに評価すべきであり、大久保や興梠、また、交替出場で先制点を決めたMF香川真司のプレーには、「得点するならここだ」というスポットに入っていく嗅覚を感じる。それだけに、シュートの瞬間に冷静さや精度を欠いて決められないということが、実に残念でならない。

 象徴的だったのが後半43分に香川がヘディングシュートを放った場面だ。後半27分の先制点や、その10分後に右足で試みた得点機と同じようなプレーパターンで、右サイドに深く切り込んだDF内田篤人からの折り返しをフリーで受けた。だがこの時、頭で合わせた香川の体は、ゴールから少し右へ開いたまま。角度調整を瞬時に図るまではいかなかったのかもしれないが、本人もよほど悔しかったようで、試合後には19歳と206日で決めた代表初ゴールよりも「外したことの方が印象に残っている」、と嘆いていた。

 代表戦4試合目の19歳に、あの場面で冷静になって体の角度の調整や相手GKの位置確認などを瞬時に行えというのは、なかなか難しい注文なのかもしれない。だが、プレーに可能性を感じさせる選手だからこそ、この日彼が感じたその後悔の念を次へつなげてほしい。それがきっと今後の彼の成長と日本代表チームの発展を左右するはずだ。この話は彼に限らない。つまり、この試合で多くのチャンスを決めきれなかった選手らが、二度と同じようなミスをしないために、何度も何度も練習を重ねて自分の体に感覚を刷り込ませることができるか、だ。

 問題はFWのシュート精度不足に限らず、クロスの精度でもあり、そのタイミングでもある。歯車のかみ合わせのようなものだ。カチッとはまらなければ機能しない。

 ところが、代表チームは、試合のために集まるという一時的な集団のため、チームメイトと練習を重ねる時間は限られている。しかも、招集されるメンバーはその時々で変わることが多い。人が変わればプレーのテンポもパターンも微妙に変化する。この日の試合でも、特に前半はボールを持ってから選手がパスの出しどころを探して迷うような場面が少なくなかったが、それも顔ぶれが違った影響か。だが、たとえ時間が限られていようとも、代表チームでは状況へ瞬時に、かつ的確に対応することが求められている。

 今回のUAE戦で、日本はどんなに多くのチャンスをつくっても、それに見合うだけの得点を決めることはないのだという印象をW杯予選のライバル各国に与えてしまったような気がする。しかも、カウンターで失点する傾向があることも露呈した。日本に対しては堅守速攻で十分と思わせてしまったとすれば、今後、カウンターの精度を上げて守備を固める対戦相手が増える可能性もある。この試合が生んだデメリットと言えるかもしれない。

 このイメージを覆すには、堅守速攻では太刀打ちできない武器があることを示すしかない。つまり、得点をすること。そのためには、やはり地道に練習を重ねて、チャンスが来たときに動じないだけの素地を作っておくしかない。各自がプレー精度を上げる一方で、選手同士で話をしたり、共にボールを蹴ったりして、それぞれのパターンと呼吸を体得していくしかないのではないか。遠回りのようだが、それが日本の決定力不足解消への近道のように思える。

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