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王者バルサに銀河系軍団が牙をむく!
今季初の“クラシコ”を徹底検証。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byAFLO
posted2009/12/03 10:30
後半開始6分、アンリと代わってピッチ入りしたイブラヒモビッチが5分後にゴール。クラブ創設110年の記念日にふさわしい勝利をもたらした
首位攻防戦となり、メッシ、イブラヒモビッチ、カカ、ロナウドといった現在のビッグ4とも言える選手達の競演として例年以上の注目を集めたクラシコはバルセロナの勝利に終わった。
戦前、メッシとイブラヒモビッチが負傷によって出場が危ぶまれるなど、一時はバルセロナにとって厳しい戦いになるかもしれないという雰囲気が生まれかけていた。しかし、バルセロナはクラシコ直前のCL戦の対インテル戦で相手に1度しかシュートを許さずに2対0と完勝。さらにはメッシ、イブラヒモビッチ共に出場が可能となったことで、試合直前にはバルセロナがインテル戦の再現のようにレアルを翻弄するのでは、という雰囲気が復活してきていた。
圧倒的不利なはずのレアルが見違えるような動きを!
しかし、試合が始まってみるとレアルは戦前の予想を覆す動きを披露。
バルセロナのパス回しを分断し、ロナウド、カカ、イグアインの高速カウンターでバルセロナ最終ラインを脅かし、決定的な場面を次々と作り出していった。圧倒的不利と見られながら乗り込んだバルセロナの本拠地カンプノウでのレアルは、攻守において連動性に欠けており選手の個人技頼みだったそれまでの彼らとは全く違うチームになっていたのだ。
レアルがバルセロナを追い詰めると言っても過言ではないほどのプレーをすることができたのは、運動量、連動性においてバルセロナを上回ったからだった。
前線のロナウド、カカ、イグアインがバルセロナ最終ラインにプレスをかけると、バルセロナ最終ラインは自ずとシャビ、ブスケッツ、イニエスタ、メッシ、アンリら遥か前方の選手へとボールを送ることが多くなった。レアルに疲れが出た試合終盤まで、バルセロナはいつものような最終ラインでボールを動かしながら全体のバランスを整えてラインを上げるというプレーをすることができなかったのだ。
一度ミスをすれば一気にゴールを奪われかねない突破力を有するレアルの攻撃陣からなるべく遠い位置へとボールを送りたいというDFの本能が、いつもの余裕をバルセロナ最終ラインから奪っているかのようだった。
攻め込まれるバルサは前線へのロングボールを多用し始める。
中盤、前線とのバランスを整えていない状態で放たれるパスの距離は自然と長くなり、シャビ、イニエスタ、メッシらに入るボールはコントロールが難しいものになった。
さらに、レアルのシャビ・アロンソ、ディアッラ、マルセロの中盤、アルベロア、アルビオル、ペペ、セルヒオ・ラモスの最終ラインは前線がかけたプレスによって限定されたパスコースをきっちりとケアできたことで、レアル陣内に入ると常に肉弾戦が繰り広げられるような密集地帯が作り出された。コントロールが難しいボールをトラップした途端にレアル守備陣が襲い掛かってくるため、イニエスタ、シャビ、メッシらは本来のプレーをすることができず、バルセロナはレアル陣内半ばでボールを失うことが多かった。