試合を支配するレアルは得点機をいくつも作ったが……。

　一人の選手に複数の選手が襲い掛かってボールを奪ったレアルは、そこから一気に攻勢に出る力を持っている。バルセロナも奪われたボールにすぐにアタックするといういつもの守備を行ったものの、それを凌駕するほどの速くて強いパスをトップスピードに入りながらコントロールしてしまうロナウド、カカ、イグアインらによって中盤での守備ブロックを突破されることとが多かった。

　スピードに乗って手薄なバルセロナ陣内に攻め入ったレアル攻撃陣はさらにそれぞれの動きを連動させた。カカが左から中央へと切れ込んでいけば中央から左へとイグアインが走り出し、右ではロナウドが攻め上がる。それぞれが走る距離は長いものの、バルセロナ陣内に大きなスペースが広がっていたことと、バルセロナ最終ラインよりも彼らにスピードがあることで、レアル攻撃陣の連係プレーの精度は非常に高く維持されていたのだ。

　こうしてレアルは前半19分にロナウドがバルセロナGKバルデスとの1対1の場面を手にするなど、前半に4度、後半には8度の決定機を作り出すことに成功した。

　しかし、試合結果が示すようにレアルはいずれのチャンスもゴールに繋げることができなかったのだ。

レアルは敗れたが、今季最高の出来とむしろ称賛された。

　最後の最後で、レアルの前にはGKバルデスとCBプジョルらが立ちはだかっていた。

　特に前半19分にロナウドが放った至近距離からのダイレクトシュートを残した右足に当てたバルデスのスーパーセーブはこの試合最高のプレーと言えるものだった。

　また、プジョルは試合後に地元テレビ番組で“救世主”と呼ばれるほどに窮地を救うカバーリングを見せ続けた。

　戦前のバルセロナがレアルを翻弄するという予想は覆されたものの、後半から出場したイブラヒモビッチの見事なボレーシュートで勝利を手にしたバルセロナは攻守において勝負強さを発揮した。試合翌日にメッシが「予想していたよりもはるかに厳しい試合だった」と語ったように、バルセロナイレブンはピッチ上でレアルの驚異を感じていたことだろう。しかし、それでも勝利したことでバルセロナは再びリーガ首位に立ち、王者としての自信を更に深めたのだ。

　一方のレアルは、勝利こそできなかったものの、ピッチ上での動きは今季最高と言えるものだった。この試合のレアルは勇ましく、チームとしての連動性に優れていた。結果に厳しい地元メディアでも、試合翌日のMarca紙で「これ以上ないほどのプレー内容」、AS紙は「復調への兆し」と報道したほどの評価を与えている。

　激しい一戦を戦い終え、バルサは更なる自信を手にし、レアルはポジティブな変化を見せた。

　首位の座は入れ替わったものの、両チームのリーガの覇権争いは、ここから本格化していきそうだ。