Jリーグ観察記BACK NUMBER
Jリーグであえて「格差」を楽しむ。
~ピッチ外の社会的テーマに注目~
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byShigeki Yamamoto
posted2010/02/16 10:30
昨季、J2最終戦の大逆転で昇格を決めた湘南の反町康治監督。J1でもサプライズを起こすことができるか。隣は湘南生え抜きの田村雄三
いよいよ南アフリカW杯が4カ月後に迫り、今季のJリーグはいつも以上に注目を集めることになりそうだ。
とはいえ、「誰がメンバーに選ばれるか」とか、「誰が秘密兵器になるか」というW杯の話題ばかりになってしまうのはもったいない。こういうときこそ、普段Jリーグに触れる機会が少ない人に魅力を伝えるチャンスでもあるだろう。
今回は筆者の独断と偏見で、「Jリーグの楽しみ方」を2つ紹介しよう。
貧する者が富める者を倒す痛快劇がJリーグには存在する。
ひとつ目は、「格差を楽しむ」だ。
Jリーグが発表する各クラブの営業収入を見ると、それぞれの経営規模にはかなりの“格差”があることがわかる。2008年度の公開資料をもとに、5つのグループに分けた。
<貧乏>
山形(6億2600万円)
湘南(9億3000万円)
<庶民>
仙台(14億2100万円)
C大阪(19億4000万円)
神戸(20億260万円)
広島(22億8700万円)
京都(25億020万円)
新潟(25億9000万円)
<中流>
大宮(30億5900万円)
川崎(33億2000万円)
磐田(33億8700万円)
FC東京(34億3300万円)
清水(34億5700万円)
<金持ち>
横浜FM(40億9200万円)
名古屋(40億7100万円)
鹿島(41億8000万円)
G大阪(43億9900万円)
<超金持ち>
浦和(70億9100万円)
「貧乏」の山形の営業収入は、「超金持ち」の浦和の10分の1以下。また、同じく湘南も約8分の1で、経営規模だけを見ると、両者の間には埋めようのない差が存在している。
しかし、金持ちが必ず勝つとは限らないのがスポーツの世界だ。
昨季、山形は「超金持ち」の浦和に全敗してしまい、「金持ち」のG大阪、鹿島、名古屋にも勝てなかったが、横浜FMからは1勝を上げることができた。裏を返せば、山形は金持ち相手に1勝しかできなかったということなのだが、機会が限られているからこそ、1度のジャイアントキリングの価値が増すというものだ。