岡田ジャパン試合レビューBACK NUMBER
【W杯アジア最終予選/vs.豪州】
この敗戦を糧にするためにも、
Jリーグでの意識改革が必要。
text by
木ノ原句望Kumi Kinohara
photograph byTamon Matsuzono
posted2009/06/20 06:01
アジア最終予選で無失点だったオーストラリアのゴールをこじ開けた岡田ジャパンだが、川口能活同様ケーヒルから2点奪われた楢崎正剛
サッカー観戦とは、勝敗の行方だけを楽しむものではない。なにか新しい発見はないものかという期待は、どの試合でも常に抱いているものだ。
2010年ワールドカップ出場をすでに決めている日本とオーストラリアの対戦となれば、来年の本大会へ向けて、自国のチームにとってのプラス材料はないだろうか、という目線になる。選手の新しい組み合わせがもたらす効果は、気になるポイントの一つだろう。また、選手がこれまでとは違った技量や可能性を見せてくれたりすれば、目にしたこちらは少し得した気分にもなる。
相次ぐ故障者をかかえての、岡田ジャパンの新たな挑戦。
6月17日、メルボルン・クリケット競技場で行なわれたワールドカップアジア地区最終予選最後の試合に、日本は多くの主力選手を欠いて臨んだ。MF松井大輔を除く欧州組と、ケガをしたMF遠藤保仁が欠場。ボランチ役の遠藤とMF長谷部誠が同時に不在となったのは、10日のカタール戦に続いて2試合目である。さらに現地で体調を崩したDF中澤佑二も出場を見送る中、彼ら不在のチーム構成でどういう展開ができるのか、これまで出場機会の少なかった選手にとっては代表チームでの可能性を示す機会でもあった。
結論から言えば、発見はあった。ただ、できたことよりも、できなかったことや足りないものを再確認する面のほうが大きかったように思う。それが、逆転負けという結果につながったとも言えるだろう。日本は前半39分にDF闘莉王のゴールで先制したものの、後半、オーストラリアのFWケーヒルに2得点を許し、最終的に1-2で敗れた。
フィジカルで勝てない相手に対し、柔軟な戦い方ができなかった。
できていたこととしては、中澤の代わりに久しぶりにセンターバックに入ったDF阿部勇樹と闘莉王を中心に、日本の守備陣が長身のFWケネディやケーヒルに流れの中では上手く対応し、抑えていた点がまず挙げられる。
さらに、先制点を生んだ前半39分のCKで、MF中村憲剛 が見せた精度の高いキックと、闘莉王の相手の裏をつく動きとヘディングの強さも、日本の武器として期待を抱かせるものだった。彼ら2人は、動きに高い質(=精度)が伴っていたからこそ、ゴールネットを揺らすことができた。
一方、できなかったことといえば、前線でのボールキープと、1対1の競り合いに勝つこと。体格に差があるとはいっても、簡単に跳ね返されているようでは、到底自分たちのスタイルのサッカーなど展開できない。フィジカルコンタクトで勝てない相手には、自分の身体の入れ方や手の使い方を工夫するなど機転を利かすことも必要だ。また、せっかくマイボールにしても、パススピードやプレー判断が遅くては効果的な組み立てにつながらない。やはり、攻撃が手詰まりになったときに、ペースを変えるなど全体の舵取りができる存在がほしいところだ。
そして、失点の場面では相手へのマークがずれた。後半14分の1失点目は、相手のFKに闘莉王がわずかに競り勝てず、闘莉王の頭に当たったボールがケーヒルへ渡り、ヘディングで決められたもの。後半32分には、CKの場面でDF内田篤人が相手にブロックされて動けず、GK楢崎正剛も飛び出すことができないまま、裏に入ってきたケーヒルにボレーで決められた。