日本代表、2010年への旅BACK NUMBER
【W杯アジア最終予選/vs.豪州】
逆転負けで、悪夢再び。
~W杯ベスト4から遠ざかった夜~
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTamon Matsuzono
posted2009/06/18 12:20
本格的な冬の到来を感じさせる、寒い夜――。
にもかかわらず、既に予選突破の決まったチーム同士の消化試合に、7万人の大観衆がメルボルンクリケットグラウンド(MCG)に押し寄せた。会場のスタッフが「サッカルー」(オーストラリア代表の愛称)の応援グッズとして黄色いキャップや、ゴールを決めた際の「GOAL!」と書かれたボードを、来場したサポーターに精力的に配っていた。グッズを身につけ、会場はウエーブが繰り返される。まるでカーニバルである。
あれっ? こんなにサッカー熱の高い国だったっけ。そういえば、空港のショップでもワラビーズグッズより目立つ場所に「サッカルー」のグッズが売られていたような……。とにもかくにも、代表人気のあまりの沸騰ぶりに驚かされてしまった。
あまりにも大きかったフィジカルの差。
Boo!
ラグビーの肉弾戦に慣れ親しんできたオーストラリアの観衆から、しきりにブーイングが飛ぶ。
大体決まって同じシーンだった。屈強なオーストラリア人に弾き飛ばされた日本人選手がピッチのなかでちょっと長めに倒れているだけで、場内がざわつくのである。ファウルはオーストラリアのほうなのに、「オイ、いつまで倒れてんだよ!」とばかりに。
両チームのフィジカルの差は、相当あった。この日、フィジカルで十分に対抗できたと言えるのは、無失点を誇ってきたオーストラリアの守備をセットプレーからのヘディングで打ち破った、闘莉王ぐらいだろうか。ピッチのあちこちで繰り広げられた局面で、勝てない場面が続く。攻撃に転じたところで中盤の選手はうまく前を向けないために展開できず、前線もボールを引き出せない。それでも、速いプレッシングと粘り強い「全員守備」から打開したいという意図は感じた。それが、闘莉王の先制ゴールに結びついた。
ドイツW杯の悪夢が再び繰り返された。
だが、あの日の悪夢に似た展開になった。
先制したのに、ジリジリとパワーで押し込まれたドイツW杯での対戦を再現するかのように、1点をリードして以降、ロングボールを蹴られてはリズムを崩してしまうのだ。たまらずファウルを犯して相手にセットプレーを与え、チャンスをつくられるという展開。
セットプレーからの2失点は、この日センターバックに入った阿部勇樹がうまく対応できなかった面も、確かにある。しかし、阿部だけの責任ではないだろう。生命線だった「全員守備」にほころびが出始め、修正が効かなかったがゆえの失点だった。
単純に放り込んでパワーで勝つことに切り替えたオーストラリアの攻め手をわかっていながら、防げなかった。岡田武史監督も、選手たちも「崩される場面はなかった」と言った。それが収穫の一つであることは間違いないだろうが、オーストラリアは、相手を崩さなくても、高さや強さで点が取れるチーム。ゲーム序盤は日本の守備をきれいに崩そうと思って攻撃を組み立てていたのかもしれないが、球際での粘っこさが日本から消えてからは、力攻めで日本をやすやすと押しのけた。