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本命と対抗。 

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杉山茂樹

杉山茂樹Shigeki Sugiyama

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photograph byNaoya Sanuki

posted2006/12/20 00:00

本命と対抗。<Number Web> photograph by Naoya Sanuki

 決勝トーナメント1回戦の組み合わせが決まった。それ以前と現在とで何が違うかといえば、英国のブックメーカーが示す優勝倍率のオッズだ。抽選会の前、3大ブックメーカー(CORAL、William

Hill、Ladbrokes)は、すべて1番人気にバルセロナを推していた。チェルシーは2番人気だった。それが現在は、両者互角に変化している。CORALはチェルシー本命、対抗バルサ。William

Hillは両者タイ。そしてLadbrokesはバルサ本命、対抗チェルシーという様に、微妙な割れ方をしている。

 グループステージの第6週(最終週)が終了する以前は、3者とも、本命チェルシー、対抗バルサで一致していたので、つまり見解は、チェルシー→バルサ→両者互角で、推移している。

 チェルシーの対戦相手はポルト。バルサの相手はリバプール。チェルシー人気が盛り返した理由は、対戦相手の力と深い関係がある。チェルシーにとってのポルトより、バルサにとってのリバプールの方が難敵であるからに他ならない。

 リバプールのプレミアでの順位は現在第3位。2位チェルシーとの差は大きいが、出遅れを挽回し、定位置まで回復させている。その好調さを、英国のブックメーカーも実感しているのだろう。

 好カードであることは確かだ。リバプールはバルサにとって、戦いやすい相手では決してない。堅いうえにバランスが良い。大崩れしないタイプだ。一昨季に優勝した経験もあるし、監督のベニーテスも、バルサについては熟知する戦術家だ。

 思い出すのは、一昨季のファイナルで、後半から用いた布陣だ。時は0−3。前半はミランの一方的なペースで推移した。リバプールはリスクを冒してでも、攻めなければならない立場に追い込まれていた。ベニーテスはそこで4−4−2を諦め3バックを選択した。3−6−1的な3−3−3−1を採用し、前線からプレスを思いきり掛ける手段に打って出た。余裕綽々だったミランのバックはこれを機に、一転してパニック状態に陥った。良くないボールの奪われ方を繰り返した。ピルロとカカの2人も、後方でボールを追いかける作業に追われることになった。

 0−3はいつの間にか3−3になり、PK戦の結果、リバプールはミランに勝利した。奇跡の番狂わせは、ヒディンク顔負けのベニーテスの采配なしには語れない。魂だけが原因ではけっしてない。そうした意味で、ライカールトにとっては手強い相手だ。リバプールは簡単には引いてこない。攻撃的なバルサに対して、バックラインを高く保ち、攻撃的に挑むだろう。バルサが受け身に回ると危ない。

 問題は、この一戦にエトーが間に合うか否かだ。復帰は3月といわれている。3月上旬なら、第2戦にはギリギリ間に合うことになる。やはりこのチームを語るとき、エトーの存在は欠かせない。彼がいるかいないかで、戦力は2割違う。ロナウジーニョより貢献度は遥かに高いと少なくとも僕は思う。先のクラブW杯の敗因も、そこにある。

 バルサ&チェルシー。リヨン、マンチェスターU、レアル・マドリー、アーセナルがそれに続くが、一昨季、昨季と2年連続バルサと大接戦を演じたミランは、さらにその下の扱いを受けている。セリエAの戦いを見ると、それもやむなしという気はするが、それだけに抽選の結果には満足しているに違いない。決勝トーナメント1回戦の相手は、セルティックなのだから。番狂わせが起きる可能性は限りなく低い。セルティックパークで行われる第1戦で、ドジを踏まない限り安泰だろう。

 それにしても、ゴードン・ストラカンは、中村俊輔をなぜ先発させなかったのか。グループリーグ第6戦、コペンハーゲン戦の話だ。その結果、セルティックはグループ1位の座を、むざむざとマンUに譲ることになった。決勝トーナメント1回戦で、1位チームと対戦することになった。その結果が、ミランだ。リールやポルト、あるいはPSVぐらいなら、可能性を大いに感じさせるのだが。

 実力が接近した同士の対戦は、レアル・マドリー対バイエルン、インテル対バレンシアになる。3大ブックメーカーのレアル・マドリーに対する評価は、それぞれ7、5、5(番人気)。対するバイエルンは9、10、9。インテルは3者とも6番人気。バレンシアは10、9、11。

 僕が推奨するバレンシア人気は相変わらず低い。グループリーグを首位で通過したにもかかわらずだ。怪我人が続出し、スペインリーグで順位を下げたこと、相手のインテルがそれなりの強豪であることが、人気薄の原因だろう。しかし、それだけに「買い」の条件は整っている。ますます「穴」のムードは漂うのだ。怪我人さえ回復すれば、このチームはそれなりに強い。堅い上にバランスが良い。大崩れしないタイプ……と言えば、どこかのチームを連想する。リバプールだ。バルサは思いのほか苦戦しそうだと予想する理由でもあるのだけれど、それはともかく、ベニーテスは元バレンシアの監督だ。現在のバレンシアにもその流れは息づいている。もっと言えば、'99〜'01シーズンに2年連続チャンピオンズリーグで準優勝を飾った、クーペル監督時代の流れもいまだに健在だ。チャンピオンズリーグに適したメンタリティを、このチームは備えている。リバプールも同様に備えていると、僕は見ている。

 結果はどうなるか。バルサ、バレンシアとも、怪我人の復帰は待ち遠しい限りだろう。

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