日本代表、2010年への旅BACK NUMBER
選手をほぼ無傷で帰還させた
岡田監督のマネジメント力。
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTamon Matsuzono
posted2009/06/23 06:01
体調不良者は出たが、被害は最小限に食い止めた。
日本協会としては最大限にバックアップしたと言える。ウズベキスタンにもオーストラリアにもチャーター便で往復し、食事も専属シェフを帯同させている。たとえばオーストラリアに行けば、オージービーフを使った料理など現地の特産品をふるまうなど、あきさせないような工夫もしている。もちろんハード面だけではなく、岡田武史監督は日程のなかに〝リフレッシュデー〟を設けて自由な時間をつくり、メンタル面でガス抜きをさせてもいる。
実に、コンディションづくりにはデリケートな配慮があった。体調不良者は出てしまったとはいえ、被害を最小限に食い止めたとも言えるのだ。指揮官は、内田といい、中澤といい、カタール戦以降に休養をとらせた欧州組といい、無理な選手起用は避けた。
アジア予選は欧州よりも楽!? 岡田監督の考えは……。
タシケントでのある日の練習後、岡田監督にこんな質問が飛んだ。アジア予選の大会方式は欧州予選に比べると楽に思わないか、という主旨の質問だったように記憶している。
そこで指揮官は表情を変えることなく、こう言っている。
「いや、楽ではないですよ。移動もヨーロッパに比べると全然長いし、直行便がないところもある。気温も劇的に違えば、時差もあるし、ヨーロッパとは比べられない大変さがアジアにはある。アジアではアジアなりに、やっていかないといけない」
選手をほぼ無傷で帰還させた管理能力を評価すべき。
アジアでの戦いを軽んじることなく、真摯に対応したことで世界最速のW杯出場を決めることができた。さらにケガを抱える中村俊輔や、1年間ほぼフルで戦ってきた本田圭佑ら欧州組を休ませることができ、中澤佑二以外はダメージを残さずに各クラブに帰すことができたのは意義深い。中澤にしても軽症であるし、間もなく復帰することだろう。
1年後の本大会に向けたコンディションづくりが始まっていることを考えれば、ほぼ無傷で生還させた指揮官のマネジメントの部分はもっと評価されていい。