スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
楽天にとって野村監督は格安だった?
日米の有名監督を徹底査定する!
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKYODO
posted2009/11/25 10:30
楽天の三木谷浩史氏と野村克也前監督。一時期は確執が報じられたが野村氏の名誉監督受諾で関係も良好になった
MLBでは“2 million”(約1.9憶円)超えが大監督の証。
ロッテ時代の5億円は日本の相場では考えられない特別なものだが、これをメジャーリーグの相場に当てはめてみたら、どうなのだろう?
参考) “Baseball skippers' pay compares unfavorably” USA TODAY
2007年のデータではあるが、相場を知るにはいい資料だ。
もっとも高給取りなのが、ジョー・トーリで約7億円。この年俸はヤンキース時代のものだが、現在のドジャースでも同等レベルのお金をもらっている。
大監督の目安となるのは、“2 million”(約1億9千万円)という数字だ。2007年の開幕時点でこの数字を超えているのはトーリ、ルー・ピネラ(カブス)、ボビー・コックス(ブレーブス)、トニー・ラルッサ(カージナルス)、マイク・ソーシア(エンジェルス)、ジム・リーランド(タイガース)の6人だ。
2008年からはこの面々に加え、レッドソックスと3年約12億円という大型の契約更新を行ったテリー・フランコーナが加わった。フランコーナは2回、レッドソックスを優勝に導いている実力者だ。
しかし約1億円に達しない監督が15人もいて、中には50万ドル、5千万円に届かない指揮官が3人もいる。これは日本の監督より、安い。
広島時代のブラウン監督の年俸がずいぶん安いと思ったが、アメリカの相場で考えれば普通なのである。
同じ年俸ならば、トレイ・ヒルマンのように北海道日本ハムで日本一を経験して実績を作り、ロイヤルズの監督にステップアップするという日本を経由した「転職」の道を選んでも不思議はない。
“日本一2回で2億”が日本人監督の目安になる!?
こうして日米の監督の給料を比較してみると、バレンタインの千葉ロッテ時代の金額が突出していたことが分かる。彼は2000年のメッツ時代にワールドシリーズには進出しているが、制覇の経験はない。
アメリカで監督になるとするなら、おそらく交渉の席で”2 million”の攻防になるのではないか。そうなると小さな予算しかないインディアンズ、ナショナルズはとても出せない金額になってしまう。
やはりアメリカは実績主義なのだ。能力というより、実績。優勝した監督は一流選手並みに大きく稼げる。PR力はほとんど考慮されない。
それに比べ、日本はまだ横並び意識が強いのではないか。日本シリーズの優勝経験を複数回持っているならば、原監督のように「2億円」を突破していてもおかしくない。
かつては「1億円プレイヤー」の誕生が日本で話題になった時期があったが、「2億円監督」の出現がもっと話題になってもおかしくない。
これからは日本シリーズ優勝2回で2億。これがひとつの目安になるはずだ。