野球善哉BACK NUMBER
NPB選抜vs.大学代表の試合に見た、
ダルと斎藤の「谷間世代」の悩み。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNaoya Sanuki/Tamon Matsuzono
posted2009/11/24 12:30
セ・パ誕生60周年を記念してU-26NPB選抜vs.大学日本代表の試合が11月22日、東京ドームで行われた。試合は1-1で引き分けとなったが、こうしたエキシビションマッチの興味は、その勝敗ではない。プロ・アマを問わず、今の若い世代には将来楽しみな逸材がたくさんいることを堪能できたことに、この試合の価値はあった。
プロで活躍する選手だけでなく、アマチュアの選手を追いかけている我々にとって、こうした若い世代の活躍は実に頼もしいものがある。
先発に抜擢された前田健太(広島)と斎藤佑樹(早大3年)は同年代で、2006年春の甲子園では、ともに出場していた選手である。他にもNPBの1番を打った坂本勇人(巨人)、NPBの2番手で登板し、3者連続三振に斬った大嶺祐太(ロッテ)もしかり。今回は辞退したが、田中将大(楽天)はこの世代の代表格であるし、大学日本代表ではストレート勝負が光った澤村拓一(中大3年)や大石達也(早大3年)も同じ世代だ。
プロ入り4年目&大学4年生にスター選手がいない?
この「田中・斎藤世代」は、「松坂世代」以来の黄金世代到来を感じさせる逸材が揃っている。
しかし、だからといって、すべての若い世代の未来が明るいというわけではない。「田中・斎藤世代」の陰で伸び悩んでいる世代があることも、事実として受け止めなければならない。
それは「田中・斎藤世代」のひとつ上――プロ入り4年目、大学4年生――の世代である。
今年4月、大学4年生のある選手が、自らの年代が「不作」であると感じ、こんなことを話していた。
「僕らのひとつ上は、ダルビッシュ(日本ハム)さんとか、涌井(西武)さんとか、その年を代表する選手がいますよね。ひとつ下は、田中とか、前田とか、大学生では斎藤がいます。でも、僕らの代って、コレっていう選手がいない。プロにも僕らの世代を代表する選手がいないのはさびしいですね」
4年前のドラフトでは“豊作の年”と言われていたのだが?
確かに今年のドラフトは、大学生に逸材が少ないと言われた年だ。外れ1位を除いた1位指名がオリックスの古川秀一(日本文理大4年)だけだったことはその現状を示している。田中や坂本がプロで顔になり、大学生の斎藤や大石らが刺激されるような現象が、「田中・斎藤世代」のひとつ上には極めて薄いのだ。
とはいえ、今の大学4年生、プロ入り4年目の世代が高校生だったころを振り返ると、彼らの世代は決して「不作」とは嘆かれていなかった。むしろ、その逆だ。スカウトたちは「どこにいっても、ドラフト候補が大勢いる豊作の年」と、よく言ったものだった。