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楽天にとって野村監督は格安だった?
日米の有名監督を徹底査定する!
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKYODO
posted2009/11/25 10:30
楽天の三木谷浩史氏と野村克也前監督。一時期は確執が報じられたが野村氏の名誉監督受諾で関係も良好になった
現在発売中のナンバー741号で、『島田オーナーが語る楽天的経営術』の記事を担当している。
取材のなかで島田オーナーは、野村監督と契約更新しなかった理由について、「コストを度外視するということはあり得ません」と話している。
2009年、野村監督の推定年俸は1億5千万円。これは巨人の原監督に次いで、日本人監督としては球界第2位の年俸だった。
球団 | 監督 | 推定年俸 |
---|---|---|
巨人 | 原辰徳 | 2億円 |
中日 | 落合博満 | 1億5千万円 |
ヤクルト | 高田繁 | 8千万円 |
阪神 | 真弓明信 | 8千万円 |
横浜 | 大矢明彦 | 8千万円 |
広島 | ブラウン | 4千万円 |
球団 | 監督 | 推定年俸 |
---|---|---|
ロッテ | バレンタイン | 5億円 |
楽天 | 野村克也 | 1億5千万円 |
日本ハム | 梨田昌孝 | 1億円 |
ソフトバンク | 秋山幸二 | 1億円 |
西武 | 渡辺久信 | 1億円 |
オリックス | 大石大二郎 | 5千万円 |
バレンタインの5億円は別格として、監督の年俸というのは、実績があれば1億円を突破するというのが相場のようだ。ただし、今や億単位のお金を手にするようになった選手と比べると、ずいぶん安いなあ……という気がしないでもない。
特にメディアへの露出を考えると、今季の楽天は、野村監督に関してはかなり「いい買い物」をしたと思う。
試合終了後のボヤキは定番となり、必ずスポーツニュースで取り上げられた。監督という職業は、チームを勝たせることはもちろんであるが、いい意味で注目を集める「PR力」も現代では問われている。
野村監督の発信力は球界随一のものであり、来季からボヤキが聞けないと思うとさびしい。
おそらく、楽天がニュースに取り上げられる機会も減るのではないか?
日米にわたって抜群の営業力を誇るバレンタインだが……。
そうしたPR力に恵まれていたのが、バレンタイン監督だった。千葉ロッテの監督を退任してアメリカに帰国後、すぐさまスポーツ専門チャンネル、ESPNのコメンテーターの座に収まった営業力には脱帽してしまう。
しかしコメンテーターよりも監督に就任したいのが彼の本音だろう。ストーブリーグに入ってから、クリーブランド・インディアンズとワシントン・ナショナルズの面接を実際に受けている。
特にナショナルズとの接見はうまくいったようで、本人の言葉を借りれば「素晴らしい面接だった」と話し、監督就任が有力視されていた。
ところが、フタを開けてみたら選ばれたのはジム・リグルマン(昨季シーズン途中でマリナーズの暫定監督だったので、ご記憶の方もいるだろう)だった。
どうやらこの決定にはバレンタイン本人も驚いたようだが、「来季に向けてもう準備しなきゃ。ESPNで何を話せばいいか」と来年はスーツを着て、コメンテーターに収まることを覚悟したようだ。
参考) “Valentine moving on after Nats' decision” MLB.com
ここ数年、バレンタインの名前は各球団の候補にあがっては消えていく、ということを繰り返している。去年はマリナーズの監督候補と報道されたこともあったが、最終的には契約に至らない。
その理由を調べていくと、どうやらネックとなっているのは、年俸のようだ。