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<現地取材> デンマーク 「10年目の真実」 ~南アW杯対戦国研究~
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTsutomu Kishimoto
posted2010/01/04 10:30
ポルトガル戦で貴重なゴールを決めたエースのベントナー(右)と、日韓W杯ではチームをベスト16に導くなど智将の呼び声高いオルセン
バルサに似た押し上げが孕む大きなリスク。
しかし、日本が対戦したとき、仮に点を取られなかったとしても、点を取らなければ勝つことはできない。鉄壁の守備を破る術はあるのだろうか。ハンセン記者に率直に質問すると、笑いながらこう切り出した。
「デンマークを倒す方法を教えてあげよう」
実は、攻撃時におけるデンマークのビルドアップの方法は、大きなリスクと隣り合わせなのだという。GKから攻撃を組み立てていくとき、まずは2人のセンターバックが両サイドに大きく開く。それに伴い、両サイドバックはポジションを前にずらしていく。その結果空いた真ん中のスペースに、守備的MFのC・ポウルセンが顔を出して、ボールを受け、左右に散らしていくのだ。
「バルセロナのようだって? その通りだ。オルセンのチームはその流れを汲んでいる。でも、わざわざセンターバックが開く必要はない。バルサのようにシャビやピケがいるわけではなく、リスクが高くなるだけなんだから。日本がそこにプレッシャーをかけてボールを奪えれば、前線にはスペースがあるのでゴールへと一気に進める可能性がある」
前線からのプレスが鍵――その裏づけとなる試合があった。1対2で敗れた8月12日のチリとの親善試合だ。
「チリと戦ったときに、大きな問題が露呈した。チリのフォーメーションは3-4-3だったんだが、2-5-3のように見えるくらい高い位置からプレッシャーをかけてきて、デンマークの選手は混乱していたね。最初の10分で4回もビッグチャンスを作られてしまった。君たちも、チリ戦を参考にすればいいかもしれない」(ハンセン記者)
代表で左サイドバックを務めるクビストに話を聞くと、この弱点をあっさりと認めた。
「日本の選手たちがプレスをかけてくるのか知らないけど、高い位置からプレッシャーをかけてくるチームと対戦すると、確かに苦しくなってしまうね」
積極的にプレスをかけてくるチームを苦手としながら、その課題をどのように克服するのか、まだ答えは見つかっていないようだ。
デンマークに付け入るすきはあるのか?
デンマークサッカー協会の実質ナンバー2、ハンセン事務局長は南アフリカに向けた今後の強化方針を聞くと、こう語った。
「3月に行う代表戦では、カメルーン対策としてアフリカのチームと対戦するつもりだ。11月に行った韓国との試合(0-0で引き分け)が日本対策に通じるものがあるから、特別に日本を想定してどこかのチームと戦うことは考えていない」
このあたりに、日本が付け入るすきはあるのかもしれない。
先に挙げた「ティップスブレーデット社」は、日本戦のオッズも発表している。
・ デンマークの勝利:1.75倍
・ 引き分け:3.40倍
・ 日本の勝利:4.65倍
6月24日、答えは明らかになる。最後に笑うのはどちらだろうか。