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<現地取材> デンマーク 「10年目の真実」 ~南アW杯対戦国研究~ 

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ミムラユウスケ

ミムラユウスケYusuke Mimura

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photograph byTsutomu Kishimoto

posted2010/01/04 10:30

<現地取材> デンマーク 「10年目の真実」 ~南アW杯対戦国研究~<Number Web> photograph by Tsutomu Kishimoto

ポルトガル戦で貴重なゴールを決めたエースのベントナー(右)と、日韓W杯ではチームをベスト16に導くなど智将の呼び声高いオルセン

 '80年代に「最高のリベロ」と評された男が、自国の代表チームを率いてから10年の月日が流れた。
抽選会直後の現地取材を通して見えてきたのは、指揮官オルセンの下で成熟したチームの限界と、予選で台頭した“若き才能”が抱かせる希望だ。
寒さ厳しい当地で、北欧の雄の実情に迫った。

 北欧、デンマーク。

 W杯組み合わせ抽選以降、日本の対戦国となったこの国について様々な情報がもたらされている。しかし、具体的にどんな戦い方をするのか、何が強みで、どこに弱点があるのか、具体的なイメージは伝わってこない。

 組み合わせ決定の5日後、デンマークを訪れた。この国の冬は朝8時を過ぎても暗く、夕方4時には太陽が見えなくなる。国内リーグは早くもウインターブレイクに入っている。そんな暗闇の中で、ぼんやりとデンマーク代表の素顔が浮かびあがってきた。

デンマーク代表を10年間指揮するオルセン監督の評判。

「選手や協会関係者でも、地元のマスコミでもいい、『オルセンはどうなんだ?』と聞いてごらん。『デンマークで最も優秀な監督だよ』とみんなが答えるはずだね」

 地元紙『ポリティケン』で長年代表チームを取材するベテラン記者、ミカエル・ハンセン氏は断言する。

 モアテン・オルセン監督。

 デンマーク代表を語るとき、第一に挙げなければならない存在だ。EURO2000後に就任して以来、代表を率いて10年目。これまでに103試合で指揮をとってきた。

「世界でもっとも試合の準備をしっかりと出来る監督。彼がサッカーについて考えることをやめることはないんだ。日本についてもすでに試合の映像を確認しているはずだよ」

デンマークのフォーメーション図

GKセーレンセン、アッガー、キアルなど守備陣は充実しているが、左サイドバックだけが流動的。クビストもレギュラーの座を盤石なものにできていない

 対戦チームを徹底的に分析して、相手チームの選手を一人残らず知りつくそうとする。この選手はどういうフェイントをするのか、右に切り返すことが多いのか、左が多いのか。本当に細かいところまでチェックするという。

 現在のデンマーク代表の基本的な布陣は「4-3-3」。これはアヤックスとオランダサッカーに傾倒しているオルセンが、好んで採用しているものだ。実際、彼は代表監督に就任する前年までアヤックスを指揮しており、'97-'98シーズンにはチームをリーグとカップ戦の二冠に導いている。

 デンマークサッカー協会は、A代表からユース年代の代表チームまで一貫して「4-3-3」を採用して戦うことをポリシーとしている。これはオルセンに対する信頼の何よりの証であり、この戦術的な継続性が若手の抜擢にもつながっている。

【次ページ】 賭けのオッズは2.5倍も地元メディアは「過去30年間で最低」。

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