プレミアリーグの時間BACK NUMBER
チェルシーとインテルが1回戦で激突。
注目される新旧監督対決の行方。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byEnrico Calderoni/AFLO SPORT
posted2010/01/01 08:00
ついにスタンフォードブリッジに“帰還”することが決まったモウリーニョ。チェルシーサポーターから受けるのは拍手か、それともブーイングか?
CL決勝トーナメント抽選の2日前にあたる12月16日。チェルシー対ポーツマスのハーフタイム中に、チェルシー贔屓の英国人記者たちと1回戦の相手はどこがいいかという話をした。
西ロンドンの地元紙向けに国内外でチェルシーを追うダンは、不便なモスクワ出張を迫られることから「CSKAだけはご免だ」と主張。
「いい試合になりそうだし、ミュンヘンには行ったことがないから」とバイエルン戦を希望したのは、チェルシー一筋のフリーライターで、国内紙に紀行文を寄せることもあるクライブだ。
筆者は、チェルシーのベスト8入りを最優先し、対戦相手としては魅力に欠けるオリンピアコスの名を挙げた。
ただし、この会話は「インテル以外で」が前提条件だった。ミラノの“ネラッズーロ”との対戦は、ロンドンの“ブルーズ”信者がいまだクラブ史上最高の監督として敬愛して止まない、ジョゼ・モウリーニョと初の再会を意味する。さらに、モウリーニョ離任から数えて4人目の新監督、カルロ・アンチェロッティの今後を占う上でも重要な意味を持つ。インテル戦こそが最も興味をそそられるカードであることは明白だったのである。
因縁浅からぬ新旧監督の対決が1回戦でいきなり実現!
抽選の結果は、ご存知の通りインテル対チェルシー。イングランドのメディアは、早速、「“スペシャル・ワン”の帰還決定」とファンのノスタルジアに訴えかける一方、「モウリーニョ対アンチェロッティ」と昨季のセリエAで犬猿の仲だった両監督のライバル意識を煽り立てている。
アンチェロッティ自身は、「あくまでもチーム対チーム」と個人対決の図式を否定し、「(モウリーニョと)友好関係を築く良い機会になる」と温厚に抽選直後のコメントを締め括っている。冷静な発言の裏には、ACミランを率いていた2001年から昨春まで、インテルとのダービー19試合(公式戦)で10勝6敗3引分けという実績に基づく自信があったに違いない。グループリーグ2位で辛くも勝ち残った敵に対し、自軍は無敗のグループ首位で勝ち抜けている心のゆとりもあったのだろう。
だが、アンチェロッティと言えば、つい昨季まで「『選ばれし者』などと自画自賛する者に興味はない」とモウリーニョの人格を嫌い、「(ミランで)GKコーチで使ってやってもいいがボールの蹴り方もろくに知らないのではなぁ」と選手としては無名だったモウリーニョを茶化していた人物だ。今回の発言は、元監督を英雄として迎えるはずの自軍サポーターを意識した社交辞令と受け取ることもできる。