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<現地取材> デンマーク 「10年目の真実」 ~南アW杯対戦国研究~
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byTsutomu Kishimoto
posted2010/01/04 10:30
ポルトガル戦で貴重なゴールを決めたエースのベントナー(右)と、日韓W杯ではチームをベスト16に導くなど智将の呼び声高いオルセン
予選1試合あたりの平均得点は1.6点。死角は得点力不足だ。
10年目のオルセンが作り上げた成熟したチームは順風満帆に見える。しかし、死角はないのだろうか。
まず目につくのは、得点力不足だ。今予選1試合あたりの平均得点は1.6点。かつてラウドルップ兄弟を擁し、“ダニッシュ・ダイナマイト”と称された攻撃サッカーはなりをひそめている。
たしかにアーセナルで成長し、代表でもエースの座を不動のものにしているベントナーへの評価は高い。人気も一番だ。彼がポルトガル戦で決めた胸トラップからのゴールは、'09年デンマークの年間最優秀ゴールに選ばれ、年間最優秀選手にも選出された。
だが、予選では意外にも3ゴールしか決めていない。彼への好意的な評価は、ゴールだけではなく、チームの攻撃の形の中でその存在が欠かせないからだ。
デンマークの攻撃ではロングボールが多用される。ベントナーにロングボールをあてれば、しっかりとボールをキープしてくれるのでタメをつくれる。そこから攻撃が始まる。
だが、チームの抱える問題は、彼にボールが入った後にある。ベントナーが落としたボールを、周りの選手がゴールに結び付けられていないのだ。
決定力不足のFW陣は全員30代。高齢化が得点力不足の原因か。
通信社「リツァウス」のヘストベック記者は、パソコンの前で首をすくめて語った。
「トマソンは'08年2月にゴールを決め、代表通算得点数が歴代2位になった。もう1点を決めれば歴代トップタイ。歴代トップに並んだというニュースをすぐに配信できるように僕は記事を用意した。でも、今も記事はパソコンの中に眠ったままだよ」
トマソンだけでなく、左FWのヨルゲンセンと右FWのロンメダールは20試合もゴールから遠ざかっている。得点力不足の背景には、前線の選手がベントナーとカーレンベルグを除くと、のきなみ高齢化していることがある。
「ヨルゲンセンが34歳、ロンメダールは31歳。彼らのスピードは確実に落ちてきている。それにトマソンも年を取って33歳だ。それでも彼らは依然としてオルセンのお気に入りのプレーヤー。ケガをしない限りベンチに座る可能性も低い。相変わらずゴールは決められないんだけどね……」(ヘストベック記者)