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平均年俸とチームの強さが反比例。
広島とロッテの省エネ経営から学べ!
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byHideki Sugiyama
posted2011/05/14 08:00
2011年の年俸総額で1位の阪神と3位の巨人の指揮官がガッチリと握手。チーム成績もAクラス入りすれば良いのだが……
日本プロ野球選手会が今季の球団別平均年俸を発表した。
このランキングの楽しみ=見方は、お金の順位と成績がリンクしているかどうかにある。今季の5月11日現在の成績と比較してみると……
セ・リーグ | ||||
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順位 | 球団 | チーム成績 | 平均年俸 | 総年俸 |
1 | 阪神 | 5位(同率) | 5546万円 | 34億9390万円 |
2 | 中日 | 4位 | 4882万円 | 30億2670万円 |
3 | 巨人 | 5位(同率) | 4729万円 | 26億4830万円 |
4 | 横浜 | 3位 | 3476万円 | 19億8110万円 |
5 | ヤクルト | 1位(同率) | 3430万円 | 21億2650万円 |
6 | 広島 | 1位(同率) | 2638万円 | 15億8250万円 |
パ・リーグ | ||||
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順位 | 球団 | チーム成績 | 平均年俸 | 総年俸 |
1 | ソフトバンク | 1位 | 5278万円 | 31億6650万円 |
2 | 日本ハム | 2位 | 3981万円 | 25億800万円 |
3 | 西武 | 5位 | 3669万円 | 23億1120万円 |
4 | 楽天 | 4位 | 3656万円 | 22億6680万円 |
5 | ロッテ | 3位 | 3129万円 | 20億3400万円 |
6 | オリックス | 6位 | 2798万円 | 17億660万円 |
一目瞭然、セ・リーグの場合は年俸上位3球団が下位に沈み、ヤクルト、広島が上位に来ているところが実に興味深い。というより……下剋上が進行中で面白い展開になっている。
一方、パ・リーグではソフトバンク、日本ハムが順当な感じだが、ロッテの健闘が光る。
出費は減っても戦力は上昇!? ロッテ、好調の要因とは。
ロッテは昨年の日本シリーズの優勝チームでありながら、昨年と比べて平均年俸は10%以上もダウンしている。
この要因は西岡剛のメジャー移籍、そして小林宏之の阪神移籍など理由がハッキリしているのだが、裏を返せば、来季にそれなりの投資額を用意できる――ということを示してもいる。ロッテファンは来季が楽しみだったりして。
ロッテが好ましいのは、トップバッター西岡の穴を、自前で育てた岡田幸文がしっかり埋めていること。出塁率が低いのは物足りないが、積極的なバッティングが功を奏している。
チームとしてのロッテの特徴は、三振が少なく、四球の数が多い=出塁率が高いということだ(これは昨季から同じ)。打線としての規律がしっかりしていれば、ある程度チャンスは作れる。実は、チャンスメーカーは自前で育てることが出来るし、さほど費用はかからない。
そのチャンスを絶好調の井口資仁(現在、出塁率と長打率の和、OPSが.900を超えている。いや、恐ろしい打者だ)が返すというパターンが出来ている。
裏を返せば、ランナーを返す人はなかなか自前では育てられないので、各球団とも助っ人選手を呼んできたりするのだが、ロッテはランナーを得点に換える井口にドカンとお金を払って、効率のいい状態になっている。