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ファーガソン 「“ロナウドマネー”を遣わなかったワケ」 ~特集:マンU最大の謎~ 

text by

山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byAri Takahashi

posted2009/08/26 11:30

ファーガソン 「“ロナウドマネー”を遣わなかったワケ」 ~特集:マンU最大の謎~<Number Web> photograph by Ari Takahashi

ウェイン・ルーニーには真のストライカーとしての活躍が望まれる

すべては“主役”ルーニーありきのチーム編成。

 しかしながら、「本来のポジションならクリスティアーノの分もカバーしてみせる」と、ルーニーがゴール量産に躍起になったところで、過去2シーズンで68得点という数字を1人で補うことなどできるはずがない。チームには、昨夏に約46億円で獲得したディミタール・ベルバトフ以外にも、ルーニーをサポートしつつ得点面でも貢献できるタレントが必要になる。

 つまり、ファーガソンが求めていたのは、新たな主役ではなく、実力の確かな脇役だったのだ。移籍金もその役割に見合ったものでなければならない。プレシーズンでのアジア遠征中の会見で、指揮官は言っていた。

「ベンゼマには3500万ポンド(約53億円)を覚悟していた。妥当な査定額だったと思っていたし、交渉金額が4200万ポンドに吊り上ったところで興味を失った」

 噂の絶えないフランク・リベリー(バイエルン・ミュンヘン)の獲得にも、当初噂された約100億円の移籍金を払うつもりなどなさそうだ。「オファーはしていない」と言うファーガソンは、リベリー本人が移籍に前向きと知ってはいても、売り手の希望額(約75億円)に難色を示しているとされる。

 オーウェンとバレンシアは合わせても、ベンゼマへの予算のほぼ半額で獲得された。しかもふたりは、再び4-4-2が基本システムとなったチームに即座に順応している。ファーガソンが補強に、納得の表情を見せるのも当然だろう。

ファーガソンの頭には「新ロナウド」はいない。

 特に、フィットネスが疑問視されたオーウェンは、加入直後のアジア遠征で4試合4得点と健在をアピール。8月5日のフレンドリーマッチ(対バレンシア2-0)では、アントニオ・バレンシアが右サイドから2アシストをこなした。この試合、得点にこそ至らなかったが、ルーニーとの2トップで決定的なチャンスを掴むまでに、開始から20分とかからなかった。ローテーションの対象となるFWの1人として、テベスの穴は埋められるだろう。自らの下を去ったテベスを「ファンの人気も高かったので買い取りに動いたが、費用に見合う価値があるとは思えなかった」と評したファーガソン。年俸の大幅ダウン(一説によれば基本給はビッグクラブでは若手並みの週給300万円程度)も承知で加入したオーウェンを、“ギャンブル”ではなく“バーゲン”だと確信しているはずだ。

 一部では、戦う前から白旗を振っているようなものとまで言われた、マンUの買い控え。実の所は、ファーガソンに「新ロナウド」を買う意思など最初からなかったということだ。100億円規模の補強予算は、「ルーニーのチーム」へというプランに沿って賢く使われている。

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