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<知力、体力、乙女力> チーム青森 「思いをひとつに」 ~特集:バンクーバーに挑む~
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byToshiya Kondo
posted2010/01/25 10:30
日本代表決定戦ではチーム長野を4連勝で下した
5人の思いはただ一つ。メダルを獲り、再びブームを巻き起こすこと。
試合が終わった。
2009年11月7日。
青森市内中心部から車で10分ほど。スポーツ会館内のカーリングホールは、外の風の冷たさとは対照的な高揚感に包まれていた。
敗れたチームの選手たちが、声をかけた。
「応援しています」
失意に沈んでいてもおかしくないはずだ。なのに激励の言葉をかけてくれた。
目黒萌絵、本橋麻里の目から、涙がこぼれた。
それは、オリンピック代表決定戦でライバルとして競いあってきたチーム長野に連勝し、チーム青森がバンクーバー行きを決めた瞬間だった。
そしてそれは、4年前には成し遂げられなかった目標へ一歩を踏み出した瞬間であり、メンバー5人がそれぞれに抱える思いをかなえる戦いへの出発点でもあった。
完全燃焼するため、結果を残すためにバンクーバーを目指す。
'06年2月。イタリア・トリノから帰国した目黒と本橋を待ち受けていたのは、想像を超える光景だった。
空港の到着ゲートを出ると、歓声と拍手がロビーに響いた。フラッシュがあちこちで瞬く。今まで見たこともない数の取材陣と、出迎えたファンの姿。さながら凱旋帰国のようであった。
「カーリングというスポーツが脚光を浴びて、メジャーの位置に近づけたんだ」
目黒は喜びつつも、内心では違和感を覚えてもいた。
トリノ五輪の結果は7位。メダルを取ったわけじゃない。自分自身も納得のいくプレーができなかった。どこか悔しさを抱えての帰国だったからだ。
それは本橋にとっても同じだった。
「オリンピックに出ていい経験はできた。でも自分自身の力は出し切れたのかどうか。他の選手に引っ張ってもらっただけじゃないか」
2人には完全燃焼しきれない思いがあった。
国内の大会に出場したあと、スキップの小野寺歩とサードの林弓枝がチームを離れると表明する。
「私たちはどうしようか」
トリノ五輪に出場したもう一人の選手、寺田桜子とともに3人、今後を自問自答する日々が続いた。互いに話し合う時間も設けた。
やがて、気持ちは固まった。
「バンクーバーを目指そう」
目指す以上は、結果を残そうと決意した。