オリンピックへの道BACK NUMBER
上村愛子と“モーグルの女王”を争う、
地元カナダのジェニファー・ハイル。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byShino Seki
posted2010/01/27 10:30
1月に入ってW杯で4連勝している絶好調のジェニファー・ハイル。上村は、今シーズンこれまで2回の2位を記録したが……
女王が強さを取り戻した。
年が明けて、フリースタイルスキー・モーグルのワールドカップは、カナダ、アメリカと、北米に場所を移して開催されているが、これらの大会を通じていちばん強く印象付けられたのが、ジェニファー・ハイルの復調である。カナダ・カルガリーでの2試合、ソルトレイクシティ五輪の会場であったアメリカ・ディアバレーでの2試合の計4試合すべて優勝を遂げたのだ。
まずは、ハイルのこれまでの足跡を簡単に紹介しておきたい。
ハイルは、2002年のソルトレイクシティ五輪に、18歳で初めてオリンピックに出場。惜しくも4位とメダルこそ逃したものの、滑りの能力の高さに、一躍関係者の注目を集める存在となった。
その注目の大きさに応えるかのように、オリンピック翌月に猪苗代で行なわれた大会で、ワールドカップ初優勝。翌シーズンの'03-'04年からはワールドカップ表彰台の常連となり、初めてシーズン総合優勝を果たした。すると、'06-'07年まで、史上初となる4連覇を達成。その間に行なわれたトリノ五輪でも、見事金メダルを獲得した、モーグル界のスターである。その後、左膝の故障で休養に入ったものの、昨シーズンから復帰している。
ところでこのハイル、トリノ五輪までの間は、日本チームのメンバーとともに練習する機会も珍しくはなかった選手だ。日本のチーフコーチを務めていたカナダ人のドミニク・ゴーチェが、ハイルのプライベートコーチでもあったからだ。そのため、日本の選手たちにとってもなじみのある選手である。
上村愛子の存在がハイルのターン技術を向上させた!?
それはともかく、復帰して2シーズン目を迎え、本調子を戻してきたハイルだが、大会を見ていて感じられるのは、ターンの改善に取り組んできた成果が出ているということだ。
ハイルにかぎらない。カナダ勢全般に、同じように、滑り方の修正をかけてきていることがうかがえる。
ターンと言えば、上村愛子の強みとなっている部分だ。昨シーズンの上村のターンでの得点の高さを見て、危機感を覚えたのだろう。その成果が、とりわけハイルに出ていると言える。
加えて、ハイルの強さは、メンタルの安定にある。「自分の滑りに集中しています」という言葉に偽りはなく、常に力を発揮できる理由はそれだ。
地元カナダでの、ハイルへの期待は高い。
「ハイルは金メダルを取るという前提で、メダル予想は計算されている」と、カナダ人記者は語っていたが、昨年4月にはやばやと五輪代表に選ばれたところにも、期待の大きさは表れている。