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<知力、体力、乙女力> チーム青森 「思いをひとつに」 ~特集:バンクーバーに挑む~
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byToshiya Kondo
posted2010/01/25 10:30
日本代表決定戦ではチーム長野を4連勝で下した
「今のチーム青森なら、十分チャンスがある」(阿部コーチ)
'08年の世界選手権ではメダルまであと一歩となる4位に入るなど、少しずつ結果を残しながら進んできた。
今シーズンはいつにもまして、早いスタートを切った。陸上トレーニングやウェイトトレーニングを重ねてまずは体力を作り、8月には早くも海外遠征を実施する。カナダの大会では、強豪国がそろう中で優勝することができた。
トリノ五輪に引き続き、コーチを務める阿部晋也は、手ごたえを感じている。
「この4年は、トリノまでの反省も踏まえて、どのような大会に出場するか、どこに遠征するのかなど、新たなチャレンジも含めて良い準備をすることができました。技術も体力も精神力もトリノのチームより強くなったし、戦術の面でも技術の向上によって選択できるバリエーションを増やすことができている」
そして、バンクーバー五輪をこのように見据える。
「今回のオリンピックは、地元のカナダをはじめ、中国、スイス、トリノで金メダルのスウェーデンなど、上位の実力は団子状態といっていい。今のチーム青森なら、十分チャンスがあります。あとは本番にピークをうまく持っていけるかどうかでしょう」
トリノがあったからこそ、チームは強くなれた。
目黒もチームに自信を深めている。
「一からスタートした中で、4年間、順調に来られたという実感があります」
名前は同じながら、トリノ五輪とは別のチームとしてスタートし、ここまで歩んできたチーム青森。
ひとつ言えるのは、トリノがあったからこそ現在がある、ということだ。
トリノ五輪でカーリングがブームとなった最大の理由は、選手たちの必死な姿にあった。スキップの小野寺は、「歴史を作る」という強い意志をもって戦った。「あんなのスポーツじゃない」との中傷に対しての意地と、もっと認知してほしいという願いがこめられていた。その切実さがテレビを通じて伝わり、人々の心を打ったのだ。
日本中に起きたブームは、チームを取り巻く環境を変えた。以前は海外遠征ひとつ行なうにしても、資金不足に悩み、カンパを募ることもあった。トリノ以後、サポートは厚くなった。強化にかけられる費用も増えたおかげで、充実した海外遠征が可能となり、さらなる強化に取り組むことができたのだ。
山浦の願う「もっとメジャーに」という思いは、チームみんなのものでもあり、小野寺たちのものでもある。メダル獲得は、前チームからの思いを成就させることにもなる。