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社会人で急成長してプロ入りを目指す、
2011年ドラフト有力候補を見逃すな。 

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小関順二

小関順二Junji Koseki

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2011/02/12 08:00

社会人で急成長してプロ入りを目指す、2011年ドラフト有力候補を見逃すな。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

JX-ENEOSの大塚椋司は最速151キロの直球と落差の大きいスライダーが魅力の本格派右腕。プロのスカウトからは中継ぎ、ストッパーとして期待されている

社会人野球入りしてガラっと変わる選手がいる面白さ。

 佐藤はとにかくストレートに勢いがある。大宮武蔵野高校時代はバランスの取れた好投手ではあったが、体に強さがなく、下半身がフラフラしている印象があった。東海大北海道に進学してからも特別目を引く存在ではなかったが、Hondaに入って印象が一変。都市対抗のJR四国戦で見せたMAX149キロの快速球はプロに入っても有力な持ち球になるだろう。

 小石は立正大時代から印象が変わらない。相変わらずうまいし、相変わらずボールの出どころが見えにくい。高いポジションでテークバックを取り、トップを作るタイミングも他の投手より早い。わかりやすく表現すればパッパッと上半身の形を作ってから、じっくり下半身のリードで上半身を前に引っ張って行く。打者からすればタイミングを合わせづらいフォームである。ストレートは140キロ台前半が最速で、変化球は横変化のスライダーが主要な武器。とにかく投球フォームが打者からすれば厄介である。

 岩佐は体がまだできていない。それでも体ができればボールが一変すると容易に想像がつく。なぜ想像がつくのかと言えば、フォームが際立って良いからである。左肩の早い開きがなく、腕を内側から回せる。こういう形で投げられる投手はボールの回転がきれいで、変化球の変化もいい。何が足りないのかと言えば、スピード。しかし、スピードは体ができれば出てくるのがわかっているので、今の形を崩さなければ、あと1年で見違えるような本格派に一変すると想像がつく。こういう投手が見ていて一番楽しい。

速球派に技巧派と多士済々なのが社会人野球の魅力。

 大塚は社会人の底力を一番感じる投手だ。聖望学園時代の'08年選抜大会、みごと準優勝投手に輝いたが、このときの大塚は感心しなかった。ボールをリリースするとき、打者に正対するように体が開き切り、とにかくボールの出どころが丸見えという投手だった。それが、'09年3月のスポニチ大会、大塚は別人だった。体の開きがなくなり、バックスイングは内回りに変わり、ストレートの最速は151キロに跳ね上がっていた。高校を卒業して間もない時期で、これほど激変するのである。こういう短期間の変身は初めて見たので驚いた。'10年は故障のため登板機会が少なくよさをアピールできなかったので、ドラフト上位指名されるためには今年が正念場となる。

 祖父江は愛知大時代からドラフト候補に挙げられていた。気持ちの強さがボールに反映されているところが痛快で、一言で言えばボールがヤンチャ。150キロ級の快速球が跳ねるように打者に向かってくる、そんな印象の球筋である。変化球はキレ味抜群のスライダーにその持ち味があり、チームでは抑えの役割を任されている。

 以上、好投手タイプが武藤、岩佐の2人、速球派が佐藤、大塚、祖父江の3人、左腕の技巧派が小石という具合に、きれいに分類されている。「いろいろなタイプの選手がいますよ、見ていってください」――そういう品評会のような多士済々ぶりが、いかにも社会人野球らしくて楽しい。

【次ページ】 今季ドラフトの上位指名候補をチェックできる春。

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