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「昨年12月に異動の内示が。私のわがままなんです」“Jリーグ名物広報”が退職を決めた理由…ベルマーレで愛された「29年間ありがとう」
posted2025/04/07 11:06

2018年、スタジアムを盛り上げる遠藤さちえさん。今年2月、29年間勤めたベルマーレを退職した
text by

石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
J.LEAGUE
1999年、親会社であったフジタが経営不振により撤退を余儀なくされ、クラブは存続の危機に陥った。前年には横浜フリューゲルスが横浜マリノスに吸収合併されクラブが消滅した。決して他人事ではない、シビアな空気が漂っていた。
「1998年までは代表選手もたくさんいましたが、多くの選手を放出せざるを得ない状況だったため、選手がガラッと入れ替わり若手主体のチームになりました。チームは存続危機、そしてJ2の降格危機という二つの壁と戦っていたんです」
「勝つことよりも大切なこと」
厳しい状況ではあったが、遠藤さんはマネージャーとして前向きな空気づくりを意識した。その想いはチームにも伝わり、一丸となったベルマーレに悲愴感は漂っていなかったという。
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「選手たちは必死に食らいついている感じが、目の前の試合を夢中になって戦っていました。その姿はすごくポジティブだったと思います」
最終的に年間総合順位で最下位(16位)に終わり、J2降格を免れることはできなかったが、遠藤さんはこの1年間を「ベルマーレのアイデンティティ確立への第一歩になった」と感じている。
「勝つことはもちろん大切ですが、サッカーを、スポーツをする上で最も大切なのことは見ている人に何かが伝わることだと私は思っているんです。それが少しずつ形づくられたのが99年だったと思います。あの時の反骨心や1勝を挙げたときの喜びは忘れられないし、力強く応援してくださるサポーターの方々の支えがあってこそクラブは成り立っていることを改めて感じられた1年でした。あの出来事があったからこそ、ベルマーレは生まれ変わることが出来たんだと思います」