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「昨年12月に異動の内示が。私のわがままなんです」“Jリーグ名物広報”が退職を決めた理由…ベルマーレで愛された「29年間ありがとう」
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石井宏美Hiromi Ishii
photograph byJ.LEAGUE
posted2025/04/07 11:06
2018年、スタジアムを盛り上げる遠藤さちえさん。今年2月、29年間勤めたベルマーレを退職した
99年12月、「ベルマーレ平塚」は親会社を持たない市民クラブ「湘南ベルマーレ」として再出発。マネージャーとして奮闘してきた遠藤さんが広報になったのは、再生2シーズン目に向けていっそうチームをPRする必要があった時期だった。当時の取締役だった眞壁潔氏(現取締役会長)からかけられた言葉が心に刺さった。
「広報はクラブの生命線。重要な仕事だけどできるか?」
もともと広報の仕事には興味を持っていたが、眞壁の言葉で背筋がよりピンと伸びた。
メディアを無視した選手に苦言
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広報は広報戦略の策定からメディア対応、プレスリリースの発信まで幅広い業務をこなす。常に選手と近い距離で働きながら日々の取材対応や試合時にはインタビュー誘導などを通して、チームの活動を幅広い人に周知する。チームの“顔”であり、玄関口ともいえる重要な役割だ。
だからこそ、時に選手に苦言を呈すことも厭わなかった。試合後、記者に呼び止められているのに素通りした選手をたしなめたことがあった。ミックスゾーンでのメディア対応は選手の義務。それ以前に、人に呼び止められているのに素通りするのは言語道断。彼らの将来のことも考えて指摘した。
「JリーグやJクラブはメディアの皆さんの協力なしに発展することはできないと思っています。チームや選手個人の努力、積み重ね、結果はメディアの皆さんの存在があってこそ多くの人に伝わる。それを選手も理解して、真摯に取材を受けてほしいと思っていました。せっかく取材していただくなら良いものになった方が、選手にとってもメディアの方にとってもいい。『取材されてよかった』『取材してよかった』と感じてもらいたい。ですから、情報を共有して、スムーズに取材に入れるようにする。それが初対面だったらとくに。事前に想像力を働かせて何をすべきかを考えていました」



