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「昨年12月に異動の内示が。私のわがままなんです」“Jリーグ名物広報”が退職を決めた理由…ベルマーレで愛された「29年間ありがとう」
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石井宏美Hiromi Ishii
photograph byJ.LEAGUE
posted2025/04/07 11:06

2018年、スタジアムを盛り上げる遠藤さちえさん。今年2月、29年間勤めたベルマーレを退職した
ベルマーレ在籍29年のうち、広報を担当したのは実に22年。いまや誰もが知る存在となった。広報はもはや彼女の天職ともいえる。
「マネージャー、営業といろいろ経験してきましたけど、やっぱり一番好きな仕事ですね」
だからこそ、チームを離れると聞いたときは、誰もが信じられなかったはずだ。
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「実は昨年12月に異動の内示があったんです。もちろん会社員である以上、異動はありますし、それは当然のこと。私のわがままで辞めさせていただいたんです」
クラブへの愛をパワーに変え、突っ走ってきた29年。「他のクラブで働くことは考えられない」ほどベルマーレへの愛は深い。それでもクラブを離れる決断をしたのは、この先も「広報」として生きていきたかったからだ。
「いつの間にか広報という仕事が自分のなかでかけがえのない、大切なものになっていました。そういう仕事にめぐり逢えたことも喜びですし、ベルマーレで経験させてもらったからこそですよね」
気になるのは遠藤さんの今後だが、フリーランスの広報として仕事をしていくという。
「自分に何ができるのかを探りながら、サッカーを軸としてスポーツ全般とメディアの皆さんを繋ぐ仕事をやっていきたいと思っています」
異例の横断幕「遠藤さちえの未来に幸あれ」
2月15日、ホームの鹿島アントラーズ戦。“ラストマッチ”のこの日も遠藤さんは余韻に浸る間もなく忙しそうに動き回っていた。
「開幕戦はチームにとって特別ですし、そのために編成、準備をおこなってきました。後任に抜け漏れがないように伝えなきゃと必死で。寂しさを感じる余裕さえありませんでしたね(笑)」
試合後、スタンドには異例とも言える横断幕が飾られた。
『29年間ありがとう ベルマーレを、選手を愛し続けた遠藤さちえの未来に幸あれ』
多くの選手がサポーターが、遠藤さんへの思いを伝え、そして別れを惜しんだ。
「“さちえちゃん!”と呼ばれて振り返ったら幕が出ていてびっくり。でも、本当にありがたかったです」
退社後、はりつめていたものが一気に緩んだせいか、辞めた途端に体調を崩したと笑う。
「マネージャーや広報のときは一度も休んだことがなかったのに、思い切り風邪を引いてしまって。油断しすぎですね」
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