炎の一筆入魂BACK NUMBER
新井貴浩監督の“発言”が3季目にして激変した理由とは?「忍耐強く、先を見据えて」今季も連敗スタートのカープの若手は停滞感を打ち破れるか
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前原淳Jun Maehara
photograph byKYODO
posted2025/04/01 11:03

開幕戦のセレモニーで笑顔を見せた新井監督。この笑顔がシーズン後にも見られるか?
たとえば開幕2戦目の試合後、阪神4番の森下に逆転2ランを浴びた1球についてこう指摘した。
「インサイドの真っすぐが甘く入ったのかな。そこはトコ(床田)だけじゃなく、石原(貴規)がどう感じるかだね。1ボールから一発のあるバッターに(対する配球)。甘く入ったとはいえ、トコだけじゃなく、石原もまた勉強して次につなげてもらいたい」
1点を勝ち越した直後の中盤6回。2死二塁でカウントは1ボール。一発のある4番打者相手に大胆に勝負する状況ではない。石原には走者のいない2回に1ボールから内角カットボールでファウルを誘った残像があったのかもしれないが、侍ジャパンでも4番を務めたスラッガーの餌食となった。
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結果論での指摘ではない。石原は昨季までも、リスクの高い配球を藤井彰人ヘッドコーチや石原慶幸バッテリーコーチらに指摘されたことが何度かあった。それを踏まえての発言だったのだ。もちろんメディアを通してだけでなく、石原本人とも話をした。
正捕手の坂倉将吾が不在の中、リード面で信頼の厚いベテラン會澤翼もいるが、石原への期待も高い。だからこそ、開幕3戦目も先発マスクを任せた。
2戦連続先発出場にゼロ封勝利で応えた石原は、新井監督からの言葉に感謝する。
「これまでメディアを通して配球のことを言われることがなかったと思うんですけど、言ってもらえたことは期待も含めてなのかなと感じて、うれしかった。お前はそこもできなきゃいけないだろうと言われた認識です。あの1試合であの1球が大きな1球だったということがはっきり分かった」
「強い選手」をつくる言葉
新井監督の選手への発信は開幕前からみられた。春季キャンプ序盤、若手の注目株筆頭の田村俊介が走塁練習のアクシデントから左手を痛めて別メニュー調整を続ける中、心配する言葉だけでなく危機感をあおった。
「そんなに休んでもいられないと思いますよ。ほかに若い選手がいっぱいやっているわけだから」
その言葉は期待の裏返し。離脱することなく、春季キャンプを完走した田村は、開幕3戦目に途中出場し、5回にチーム初タイムリーヒットを放って初勝利に貢献した。
各球団が主戦投手を起用する開幕4戦目の先発を託された玉村昇悟もそうだ。実戦初登板となった2月18日の楽天戦ではふがいない投球を見せていた。
「昨年も(一軍のローテーションとして)投げているわけだからもうちょっとピリッとしてほしかったよね」
その言葉を聞いた玉村は、予定していた次回登板の前に3月1日楽天戦での中継ぎ登板を直訴。感覚を取り戻し、開幕ローテ争いを勝ち抜いた。新井監督は当時から大きな期待をかけていたからこそ、1週間の始まりともいえる“火曜日の先発”を託した。それもまた、昨季最終戦で言った「強い選手をつくる」ための起用のように感じられる。
チームが「変化する」ことは簡単なことではない。改めてそう感じさせた開幕3連戦を経て、新井監督はどのように選手を導き、チームをどのように変えていくのか。新井体制3年目のシーズンは始まったばかりだ。
