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太田雄貴「12年ぶりのフルマラソン」<私とラン2025> 

text by

林田順子

林田順子Junko Hayashida

PROFILE

photograph byTakuya Sugiyama

posted2025/03/27 11:00

太田雄貴「12年ぶりのフルマラソン」<私とラン2025><Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

「このときは、とにかく走るのが嫌いで、みんな速いから誰にもついていけなくて。だから一番最後に来て、一番最初に帰っていました(笑)。ただ、2年前に森永製菓が契約するアスリートが集まる機会があったんです。当時僕はコミュニティマネージャーを任されていたのですが、写真を見たら僕だけめちゃくちゃ太ってて(笑)。アスリートをまとめる立場の僕がこれじゃまずいだろうと思って、ダイエット目的で今までよりも走るようになりました」

仲間と出会ってランの楽しさを知る

 さらに代々木公園で出会ったあるランナーが太田さんのマインドを変えた。

「朝、代々木公園を走る人なら誰でも知っている武山さんという人がいるんですよ。キャットストリートでお弁当屋さんをやっておられて、確かもう59歳ぐらいなんですけど、多分代々木公園で一番練習している。いつも挨拶を交わす仲だったのですが、気づいたら武山さんと一緒に走るようになり、そして競うように走っていて(笑)。もちろん最初は全然ついていけなかったんですけど、練習方法を教わったり、距離じゃなくて時間で走るようになったりして。そのあたりから急にランニングが楽しくなってきたんです。武山さんを通じてラン仲間を紹介してもらって、道具とか、サプリとか色々なことを教わるようになりました。ランニングの一番いいところは、普段会わないような人たちに出会えて、一緒に走れるということだと思うんです」

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 仲間と一緒にペースランやスピード練習にも取り組み、だんだんと走る距離や時間が増え、体重も徐々に減り始めた。そんな太田さんの姿を見た武山さんが、ある日「ハーフマラソンで1時間半を目指してみたら?」と提案してきた。

「これなら現実的な目標じゃない?って言われて、2023年12月に赤羽のハーフマラソンに出ることにしたんです。だけど暑くて、靴も合わなくて、結局1時間33分もかかった。悔しかったし、自分の中でも課題が色々と残って。それで、もう少し練習を頑張って、翌年1月の新宿シティハーフマラソンでリベンジしました」

 このときのタイムは1時間23分。1カ月で10分も記録を更新したことになる。

「この1カ月でめちゃくちゃ伸びたことは間違いないんですが、本番のコンディションが良かったことと、ラン仲間の五ケ谷(宏司)君がペースメーカーを務めてくれたのが大きかったですね。前のめりになりそうなときにペースを抑えてくれたり、やばいときに前に出てくれたりして。で、記録が出たことで、このノリでフルマラソンも行けるんじゃない?って話になったんです」

【次ページ】 大迫傑に「無理です」と言われて……

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