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最強集団の進化 青学がマラソン戦線に放った刺客たち<別府大分&大阪&東京マラソンレポート'25>
posted2025/03/28 11:00

若林宏樹 Hiroki Wakabayashi 2002年9月3日生、和歌山県出身。箱根には4年中3回出場。異名は「若の神」
text by

生島淳Jun Ikushima
photograph by
KYODO
発売中のNumber Do「『50歳でも速くなる』RUNの裏ワザ2025」に掲載の《青学がマラソン戦線に放った刺客たち》より内容を一部抜粋してお届けします。
東京マラソン、青山学院大の太田蒼生がレースを盛り上げた。20km過ぎまで、先頭を走るエリート集団に果敢に挑み――そして失速した。最終的には35km過ぎに棄権に追い込まれ、この挑戦を「無謀」と取る向きもある。
果たして、そうだろうか?
あれだけグレードの高いレースで、海外のエリートを追走した度胸をもっと評価してもいいのではないか?
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東京マラソンは、日本人にとってむずかしい大会だ。世界陸連が認定する「エリート・プラチナ・ラベル」のレースであり、日本国内の他の大会と比べて「格」が高い。したがって、海外招待選手のレベルも極上となり、レースペースが速く推移していく。そうなると必然、優勝争いに日本人が絡むことが難しくなってしまうジレンマが生じる。大会前に発表されていたグループごとのレースペースを振り返ってみよう。
第1グループ 1km2分52~53秒 大会記録(2時間2分16秒)を狙っていくペース
第2グループ 1km2分55から56秒
第3グループ 1km2分57から58秒
日本のトップレベルの選手だとしても、第1グループについていくことは現実的ではない。実際、第2グループについたのは世界陸上代表を狙っていた赤崎暁(九電工・パリ・オリンピック6位)、池田耀平(Kao)、浦野雄平(富士通)という実績を持つ3人だった。しかし第2グループにつけたこの3人でさえも、中盤から終盤にかけて集団から脱落、浦野が13位、池田が14位(この2人は、それでも2時間6分台)、赤崎が17位となった。
反対に、前半は現実的なペースでレースを進めた市山翼(サンベルクス)が追い上げて10位に入り日本人最上位、井上大仁(三菱重工)が12位となった。彼らが第2グループの3選手をかわしたということは、結果だけを見れば第3グループでレースを進めるのが「日本人選手にとっての正解」だった。