箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「原晋が名前を呼び上げて…」青学大“箱根駅伝メンバー漏れ”が通告される瞬間「悔しさをぶつけるように…」寮生活の気になる実情は?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byNanae Suzuki
posted2025/01/24 11:02
青学大を率いる原晋監督(写真は2025年)
久保田だけではない。深く悩んでいる選手はたくさんいる。これは青学に限らず、どこの大学でもそうだろう。悩むこと自体は悪くない。そこから成長することも可能になるからだ。ただし、悩みが内面を蝕むこともある。最大の問題は周りが見えなくなってしまうことだ。自分の殻に閉じこもり、そこから抜け出せなくなる。
選手がそんな状態に陥ったとしたら、高木にできることは、じっくり話を聞くことであり、冷静な視点を提供することだ。主務という立場から、慰めるだけでは駄目で、最終的にどうやったら本人、そしてチームのプラスになるかを考えなければいけない。
箱根のエントリー選手発表の瞬間
悩みやストレスが最大限になるのは、箱根駅伝のエントリー発表の前の時期だ。毎年、12月10日には16人のエントリーメンバーが公表されるので、当落線上の選手たちは、気が気ではない。
ADVERTISEMENT
青学大では12月9日夜、ミーティングで監督から16人のメンバーが発表された。テーブルや椅子の床を引きずる音さえ憚られるような緊張感。今年も、監督が学年や順番は関係なく、名前を呼び上げていった。
4年生でメンバーに入ったのは、主将の藤川と高橋宗司(そうし)、そして山田学の3人。
3年生は小椋、久保田、神野、村井、渡邉利典、渡邉心(こころ)に山村隼。
2年生が一色、安藤悠哉、秋山雄飛。
1年生が田村和希と中村祐紀、下田裕太の3人だった。
メンバーから落ちると、やる気を失くしてしまう選手も少なくない。問題はそうした空気が他の部員に伝播してしまうことだ。他の大学ではインフルエンザ対策も兼ねて、メンバー外の選手は実家に帰省を促されることもある。
高木がうれしかったのは、16人に入れなかった4年生が、その後も練習を頑張ってくれたことだ。それだけではない。記録会で自己ベストを出すほど、自分を追い込んでいた同級生もいた。走り終えると、そのままトラックに仰向けに倒れ込んでいた。
本当は悔しいに違いない。4年間の思いを、そしてメンバーに入れなかった悔しさをぶつけるようにして、みんな走っていた。数年前だったら、16人に選ばれていたはずだ。いまは、レベルが格段に向上していた。努力で補えるものではなくなっていた。
原が明言しなかった「4区」
一方、16人に入ったとしても、実際に走れるかどうかは分からない選手もいる。特にいちばん距離の短い4区は山村、田村、中村の3人が競っていて、監督も誰を使うか明言しなかった。
〈つづく〉