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甲子園の風BACK NUMBER
大阪桐蔭や履正社は「(君たちは)眼中にない。相手とも思ってない」…“殿堂入り決定”イチロー氏が指導で球児に伝えた真意「同じ練習では…」
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byJIJI PRESS
posted2025/01/23 06:31
昨秋、大阪の府立大冠高校の指導に訪れたイチロー氏。大阪桐蔭、履正社などの強豪と伍すためにレジェンドはどんな心構えを授けたのか
さらに公立高校が抱える厳しい現状も口にする。
「この周囲でも1学年ではなく全部員がひとケタの学校が増えて、秋は連合チームを組んでいる学校が増えました。学校自体の統廃合も増えていますから。大阪の府立だと、工科高校で野球の強い学校は以前何校もあったんですけど、近年は統廃合が続いています。受験の出願状況を見ても、ほとんどの学校が定員割れですからね」
子どもの数が減っているのは府内のみならず、国内全体が抱えている問題でもある。それでも野球人口が多いとされる大阪でも起こっている深刻な事態の中、何とか工夫をしながらチーム強化法を探っていかなければならない。
「以前のような磨き方をやっていても…」
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2017年夏の大阪大会での躍動時に大冠高校で特に話題になったのは、選手たちの身体の大きさだ。当時からトレーニングに力を入れ、振る力をつけて打線を強化してきたが、近年はそれが必ずしも結果に結びつく訳でもないという。
「以前のような磨き方をやっていても、伸びしろで見れば今は限界がありますね。あの当時のチームと今とではスタートするレベルから違うので、どうしても結果が出なくて……。これはもう、言い訳になってしまいますけどね」
ただ、攻撃面に関しては昨年から高校野球で採用された低反発バットの影響はある。
「今までのとらえ方なら右中間、左中間に抜けていた当たりが打ち取られることが増えましたからね。今はなかなかホームランが出ないですし、繋ぐ野球に徹しています」
大冠高校では重さや太さの違う多様なバットを使った打撃練習をしているが、今もその手法は変えていない。ただ「縦振りばかりすると打球は上がるだけになってしまう。今まで間を抜けていた打球が抜けなくなったので、バットの軌道を変えていかないといけないと思いました。強く振ることに変わりはないんですけど、今まで以上に身体を使って打たないといけないことがこの1年間で分かりました」と指揮官は振り返る。