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甲子園の風BACK NUMBER
大阪桐蔭や履正社は「(君たちは)眼中にない。相手とも思ってない」…“殿堂入り決定”イチロー氏が指導で球児に伝えた真意「同じ練習では…」
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byJIJI PRESS
posted2025/01/23 06:31
昨秋、大阪の府立大冠高校の指導に訪れたイチロー氏。大阪桐蔭、履正社などの強豪と伍すためにレジェンドはどんな心構えを授けたのか
木製バットでの練習も取り入れてきたが、「しっかり振れる子は木製バットでもさほど変わらないです。でも、木製バットは経済的なことを考えるとしんどいんです。低反発バットでも1本4万ほどするので、ウチの部費からしたらなかなか買えないですよ」と指揮官は苦笑いを浮かべる。
それでも番狂わせの試合が増えたことは感じている。バントやエンドランが主流になり、いわゆる“スモールベースボール”が手段のひとつとなり、守る側としての戦い方も変わってきたと痛感する。
「2アウト満塁でセンター前ヒットが出れば今までは2点入っていましたけど、今はセンターはセカンドに投げてフォースプレーにして失点を防げる。そういった練習をすることもありますね。ピッチャーのコントロールの精度も含めて、キレのある変化球で芯を外すとか、そういった部分も大事になってきます」
「まずは春に勝ち上がってシードを」
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周囲を取り巻く環境がどんどん変わっていくうえに、新基準バットへの対応や夏場は熱中症対策など、多くの問題への向き合い方を明確にしながら駆け抜けた2024年だった。それでも現チームは夏の大会を経験した下級生が多く残り「来年に向けて楽しみな部分はある」と指揮官は手ごたえを感じているという。
「大阪が(2021年に)シード制になってから、ウチはまだ夏のシードを一度も取れていないんですよ。だからまずは春に勝ち上がってシードを取りたいです。上位に行ける力はあると思うので、この冬の取り組みが重要ですね」
その土台を、イチロー氏の指導で得た教訓をもとに、しっかり固めていく。
「下半身がしっかりしてこそ……ということをイチローさんから学んだので、この冬は下半身を意識しながら動けるように練習していきます。夏も秋も公立高校に負けているので、大阪の公立高校としての意地を見せたいです」
加藤主将の決意表明の言葉が、冬空の下に響く。先輩たちに負けない歴史を、自分たちの手で――。かつての“府立の星”は、再起をかけ、シーズンオフとなる長い冬の鍛錬期間に入る。その中で、選手たちは皆同じ方向を向く。レジェンドの教えが示す方へ、真っすぐに力強く。