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あの甲子園出場校で異変「なぜ熱血監督はやめたのか?」センバツ半年後“まさかの退任”…本人が語る“猛練習はNG”の今「地方公立校で甲子園は厳しい」

posted2025/02/07 11:01

 
あの甲子園出場校で異変「なぜ熱血監督はやめたのか?」センバツ半年後“まさかの退任”…本人が語る“猛練習はNG”の今「地方公立校で甲子園は厳しい」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

昨春のセンバツ甲子園に出場した北海道・別海高校

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柳川悠二

柳川悠二Yuji Yanagawa

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1年前、センバツ21世紀枠に選出され、甲子園出場を果たした北海道・別海高校。コンビニ経営の傍ら同校の監督を務めていた島影隆啓はその後、監督を退任していた。歓喜から1年の間に何が? 背景には「甲子園を目指す地方公立校」のジレンマがあった。【全2回の1回目】

◆◆◆

 約1万4000人という町民と、そのおよそ8倍となる11万頭の乳牛が暮らす別海町——北海道の東端に位置するこの寒冷地に吉報が届いたのは2024年1月26日だった。町内唯一の高校である道立別海高校が21世紀枠でセンバツに出場することが決まったのだ。

 町名からして浮世から離れたような印象を抱かせる別海町だが、近年は連続不審死事件の木嶋佳苗死刑囚や特殊詐欺グループを率いた「ルフィ」の出身地ということもあり、暗いニュースが町のムードを沈滞させていた。町内を覆う白雪も解かすほどの明るいニュースに、町民は歓喜に沸き、町役場も異例ともいえる5000万円もの助成金捻出を決定した。

熱血監督はなぜ退任したのか?

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「本当に町民の方々が喜んでくださいましたし、町長をはじめ町役場からも(牛の品評会会場を改装した)室内練習場を提供していただくなど多くの支援をいただいて、甲子園という舞台に立つことができました。ただ、私はセンバツから帰ってからが勝負だと思っていました。2012年に同じ北海道から21世紀枠で出場した女満別高校は、今では野球部どころか、統合によって学校がなくなってしまった。同じような事態になる可能性も否定できない郡部の小規模校である別海高校がセンバツに出場したことを、一度きりの夢物語で終わらせたくはなかったんです。滋賀の彦根東や鹿児島の大島、栃木の石橋など、21世紀枠で出場をしたあとに、自力で甲子園出場を決めたような学校に続きたかった」

 1年前のセンバツをそう振り返るのは監督だった島影隆啓だ。「監督だった」と書かざるを得ないのは、島影は昨秋の釧根支部予選で敗れた直後、「体調不良」を理由に監督を退任していたためである。まるでリーグ戦績が低迷するプロ野球監督の休養理由のようで、真相は別なところにあるような気がしていた。

 そこで再び、別海町を訪れたのである。

【次ページ】 「公立校を率いる限界を痛感した」

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