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甲子園の風BACK NUMBER
大阪桐蔭や履正社は「(君たちは)眼中にない。相手とも思ってない」…“殿堂入り決定”イチロー氏が指導で球児に伝えた真意「同じ練習では…」
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph byJIJI PRESS
posted2025/01/23 06:31
昨秋、大阪の府立大冠高校の指導に訪れたイチロー氏。大阪桐蔭、履正社などの強豪と伍すためにレジェンドはどんな心構えを授けたのか
2日目の最後は約30分間のイチロー氏の熱弁が続いた。「初めましてでここまで厳しいことを言うのは初めて」とイチロー氏自身が振り返っていたように、それだけ大冠の今後に向けて本気で接してくれたということだ。午前中から夕方まで約5時間、2日間にわたった指導は、選手たちに成長のきっかけを与えてくれたようだ。
近年、大阪の公立校が苦戦する「ある事情」
ただ、近年の大阪府の公立高校の苦戦には、ある事情も絡まっていた。
先日、東洋大姫路の岡田龍生監督の取材をした際、毎年のように上位進出を果たす「兵庫県の公立高校」と「大阪府の公立高校」の違いについて、こんな話をしていた。
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「大阪は数年前に私学無償化が言われてから公立高校に良い選手が流れにくくなった現状があるんじゃないですかね。兵庫県はそういった面で、まだ公立高校にも良い選手が来てくれますから」
東山監督も、その言葉に大きく頷く。
「それはすごく大きいですね。それに、大阪の府立高校には推薦制度がないこともひとつだと思います。以前、私学には推薦制度があっても人数の枠が決められていたんですけど、私学無償化になってからはその枠がなくなった。
例えば、ウチと私学とどちらに進学するか迷っていて、私学が無償化されればそりゃあ設備の整った私学に行きますよ。だからこれまでウチに来てくれたような野球のレベルが中間層の子でも私学に行くようになったし、野球がそこそこうまくて勉強ができる子は府立の進学校を選ぶ。そうなると、ウチのような学校には選手が集まりづらくなりました」
大冠高校は、以前は3学年が揃えば全部員は100人を超えることがあったが、近年はほとんどなくなった。現在は1、2年生で計45人在籍しており、公立高校では部員数は多い方ではあるが「入ってくる選手のレベルは以前よりも明らかに下がった」と東山監督は嘆く。