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カープ佐々岡前監督の遺産で川口・大野の左腕エース時代の再現なるか? 床田寛樹など左投手の成長で狙うは投手王国再建 

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前原淳

前原淳Jun Maehara

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posted2025/01/13 06:00

カープ佐々岡前監督の遺産で川口・大野の左腕エース時代の再現なるか? 床田寛樹など左投手の成長で狙うは投手王国再建<Number Web> photograph by JIJI PRESS

2023年、24年と2年連続11勝の安定した成績で、名実ともにエース格に成長した床田

 3連覇した18年までの3年も日本人左腕は多くなかった。それだけ力のある中継ぎ右腕が揃っていたし、左を外国人投手で補えていたことも大きい。

 先発では15年来日のクリス・ジョンソンが在籍6年で57勝を挙げるなど柱の一角を担い、中継ぎでは18年にアカデミー出身のヘロニモ・フランスアが彗星のごとく現れ、ブルペンを強化した。

 そういった背景もあってか、4連覇を逃した19年は一軍で登板した日本人左腕は中村恭平と床田寛樹、塹江敦哉のわずか3人だった。

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 20年も4人にとどまったが、佐々岡真司前監督の2年目となった21年には、先発、中継ぎともに登板数が一気に増えた。そしてその流れは、新井貴浩監督が就任した23年から加速した。

 ひとつの転機は床田寛樹の台頭だろう。左腕不足が続いた時期の"期待の若手左腕"から抜け出したのが床田であり、後輩左腕たちの道標となった。昨季まで2年続けてチーム最多の11勝を挙げ、左のエースと言われる存在となった。今季開幕投手を務めれば、広島の日本人左腕としては98年の大野以来27年ぶりの快挙となる。さらに玉村昇悟や森翔平が床田の後を追っている。

 中継ぎでは入団から4年で通算171試合登板の森浦大輔のほか、上手投げから横手投げにして新境地を開拓した塹江敦哉、先発から配置転換された黒原拓未が、昨季はそろって50試合登板をクリアした。タイプが異なる左腕による競争が激化。競争レベルが上がれば、必然的に当該選手たちのレベルも上がる。そんな相乗効果が今の広島左腕陣にはみられる。

佐々岡体制の遺産を活かして

 また、昨季10人の一軍登板左腕には、シーズン最終戦にプロデビューした高太一や滝田一希といった、1試合のみ登板の新人も含まれる。そこには新井監督の厚みのある投手陣を構築し、投手王国をつくる気概が感じられる。「育成には時間がかかる」と覚悟する指揮官は、佐々岡前監督時代に経験を積んだ若い芽をしっかりと育てようとしている。就任会見時にもそんな思いを口にしていた。

「(佐々岡前監督が)若い選手をたくさん起用してくれた。特に中継ぎの若い投手。若い投手の芽が出始めている。あとは自分がしっかりとこう花を咲かせられるようにやっていきたいと思います」

 FA市場などに参戦しないチームにとって育成はチームづくりの根幹をなす。シーズン終盤の急失速で失意のまま終わった昨季だが、就任時に語った投手陣の整備は着実に進められている。左腕投手の成長とともに、広島の投手王国再建の道もひらける。

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