炎の一筆入魂BACK NUMBER
カープ佐々岡前監督の遺産で川口・大野の左腕エース時代の再現なるか? 床田寛樹など左投手の成長で狙うは投手王国再建
posted2025/01/13 06:00
text by
前原淳Jun Maehara
photograph by
JIJI PRESS
また1人、加わった。1月7日から始まった広島の新人8選手の合同トレを見ながら、そう思った。キャッチボールの初球から1球1球丁寧に投げている姿が印象的なドラフト2位の佐藤柳之介(富士大)は、今季の広島に加わった11人目の日本人左腕投手だ。
佐藤は身長179cmと大きくはないが、小さなテイクバックから切れのある球を投げ込む。プロ野球の直球平均回転数が約2300回転といわれる中、2600回転を超えたこともある。新人ながら、九里亜蓮がFAで抜けた先発ローテーション入りが期待されている。
昨季一軍に登板した日本人左腕は10人を数える。セ・リーグでは阪神の11人に次ぐ多さで、広島は左腕王国となりつつある。1シーズンで2ケタを数える左腕投手が投げたことは、少なくとも直近20年ではない。
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かつては左腕が投手陣の柱を担った時代もあった。まだ左投げの投手がここまで多くなかった80年代にチームを支えたのは、川口和久と大野豊の2人の本格派左腕だった。
川口は1981年からシーズン後にFAで巨人に移籍する94年までシーズン2桁勝利を7度記録し、350試合に投げて96完投、131勝をマークした。大野は77年から広島一筋で22年、先発抑えにフル回転。通算707試合(224先発)で148勝138セーブをマークした。91年には川口が12勝を挙げて最多奪三振を獲得し、大野は26セーブで最優秀救援投手を獲得してリーグ優勝に貢献した。
データが証明する近年の左腕不足
だが、2000年以降の広島は左腕不足が続いた。高橋建や菊地原毅と輝きを放った左腕もいたが、“期待の若手左腕”の殻を破れないままの投手が多かった印象が強い。安定感や継続性に欠けていたことは、直近10年の広島で一軍に登板した日本人左腕の数と登板数(先発数)を検証すると分かる。
■直近10年の日本人左腕の選手数/登板数 ※カッコ内は先発数
15年…5/59(6)
16年…8/64(15)
17年…6/32(5)
18年…6/51(12)
19年…3/79(25)
20年…4/99(15)
21年…6/180(47)
22年…6/123(27)
23年…7/95(45)
24年…10/213(45)