オリンピックへの道BACK NUMBER
「スキー板の規定違反=高梨沙羅への嫌がらせ」は真実なのか…「なぜ試合前にチェックできない?」広がる疑問への“明確な答え”
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2025/01/08 17:35
W杯第9戦(フィラハ)でスキー板の規定違反による失格となった高梨沙羅
今回、高梨は1回目は失格とされず、2回目が失格とされた。2回目のあとの検査で違反とされたことを意味している。体重が減少したことで、規定にそぐわなくなったのだろう。
だから、「試合前にスキー板がその選手に適しているかどうかチェックできるはず」「ルールに適合した長さのスキー板を用意しているはずなのになぜ?」という疑問は当てはまらない。使用するスキー板の長さが試合前に適していても、また試合を通して同じ長さを使用していても、規定違反になるかどうかには体重の変動がかかわってくるからだ。
「規定違反=高梨への嫌がらせ」論
また、筆者のもとに届いた問い合わせには、「恣意的なのでは?」というニュアンスも含まれていた。くだいて言えば、「高梨への嫌がらせから、北京での出来事が、そして今回の違反が生じたのではないか?」という話だ。
ADVERTISEMENT
そのような発想になるのは、ジャンプにおいて日本が圧倒的な強さを誇ったあと、ルール改正が行われた影響で日本の選手が不振に陥ったと捉えられてきた経緯がある。具体的には1998年の長野五輪で日本男子が団体で金メダル、ノーマルヒルで船木和喜が銀メダル、ラージヒルで船木が金メダル、原田雅彦が銅メダルで強烈なインパクトを残したシーズンののち、ルールが変わった。実際、日本代表の中には、あたかも人種問題が内在するかのような発言をする選手もいた。
ただ、そのときのルール改正にあたって、日本側は賛同していた事実がある。その後も頻繁にルールは改正されてきたが、実際のところ、スキー板の長さの違反はともかく、スーツの規定違反は海外の選手も含めて珍しいことではない。恣意的に特定の国や選手を狙っているとは言えない。
失格者が出たケース、例えば大量に失格者が出た場合で言えば、北京五輪混合団体では高梨を含め、ドイツ、オーストリア、ノルウェーの計5選手が失格となった。
また、2019年11月、フィンランド・ルカで行われたワールドカップ男子でも5名が失格。試合終了直後は2位にいたリンビク(ノルウェー)、3位にいたプレブツ(スロベニア)も失格となり、順位が変わったことがある。それらをみても、日本を狙い撃ちしているというニュアンスはあてはまらない。