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「ガリバー」とからかわれた小学生時代、暴力が日常化した部活指導…元バレーボール日本代表・益子直美(58歳)が赤裸々に明かす“しごきの記憶”
text by
市川忍Shinobu Ichikawa
photograph byL)Shiro Miyake、R)AFLO
posted2025/01/11 11:01
共栄学園では春高準優勝、在学中に日本代表にも選出された益子直美さん
「口答えなんかしたら、もっと殴られますから」
益子さんは金町中学時代、当時、流行していた漫画「アタックNo.1」に憧れてバレーボールを始めた。「アタックNo.1」は1960年代から70年代にかけて日本にバレーボールブームを起こした人気漫画だ。スポーツ根性(スポ根)漫画として有名であり、その後アニメ化もされ、監督の厳しい指導に立ち向かう主人公の健気さが人気を博した。
しかし、益子さんの受けたしごきはスポ根漫画以上だった。
「特に共栄学園でレギュラーになってからは、練習中に『いつぶたれるんだろう』って考えるほど暴力が日常化していました。平手ですが、ひどいとグーでも殴られる。蹴りを入れられたこともありました。一人の選手がそれで怪我をしても、周りの人は何も言えない。口答えなんかしたら、もっと殴られますから」
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暴力を振るわれるのは、選手がミスをしたときが主だった。
プレーヤーとしては身長が高いほうではなかった益子さんは、コートのライン際をねらうなどの頭脳プレーで得点を奪うタイプだったという。しかし高校では監督の方針で高いトスを打つことになる。のちに益子さんの武器となり日本代表入りの決め手となったジャンピング・ドライブサーブとバックアタックに挑戦したのもこの頃だ。
「まだ練習を始めて間もないプレーですから、すぐにできるわけないじゃないですか。でもね、サーブミスをすると殴られる。ジャンプサーブで体力を使う上に前衛でも後衛でもスパイクを打つ。疲れ果てて『もう打てない』と思って普通にフローターサーブで打つと、また殴られて、その繰り返しです」
益子さんが明かす“高校時代の後悔”
繰り返されるジャンプ動作と着地は、まだトレーニングを積んでいない高校生の体には過酷だった。しかし指導者からは「サボってるからだ」と指摘される。フォームの崩れや、トスが安定しないなどサーブミスにはさまざまな要因があるが、そういったエビデンスは一切無視されて、気合が足りないと怒られた。
「それが続くと、わたし自身も『できるのかな? 私』『できるのにやってないのか、わたしは』って思うようになるんですよ。監督に怒られるってことは、できるのにやってないわたしが悪いからだって……」
こうした指導者の暴力は、益子さんから“バレーボールについて考える力”を徐々に奪っていったと振り返る。